和歌山市はなぜ炎上したのか その2

寄付金の使い方の続き また、費用対効果をまじめに考えたかどうかも疑問です。数百万円の設備投資を行って、手術に不慣れな獣医師に執刀させるよりも、外部委託の方がはるかに効率的だと私は思いますが、そういう検討はされたのでしょうか。もしそれで資金が底をついたとしても、再度クラウドファンディング(CF)で募ればいい話です。2800万円あれば1000頭以上の手術が可能ですから、その実績があれば皆さん喜んで寄付してくれるでしょう。

 

手術経験の乏しい獣医師に執刀させたこと 最初にお断りしておきますが、手術だけが獣医師の仕事ではありません。人間の医師の世界においても、全員が外科医ではありませんし、内科医や病理医など、必ずしも外科処置を行わない医師もいます。だからといって「手術しない医師に意味がない」などと思う人はいないでしょう。先進国においては、獣医師の分業が進んでいて、行動学の専門医もいます。しかし日本にはいまだに「手術もできない獣医師はモグリ」と豪語するような獣医師もいますが、そういう獣医師がいる限り、日本の獣医師は世界からバカにされ続けるでしょう。

長年公衆衛生分野で活躍してきた獣医師たちが、動物愛護管理センターができたからといって、そこに配属されて、いきなり手術をしろと言われたらたまったものではないでしょう。理解のある動物病院で、一定期間研修を受けないと無理です。センター長は「動物病院さんも患者さんから預かっている猫ですよね。それを我々に練習に提供してくれ、というわけにはいきません」などと言っていますが、センターから譲渡対象の猫を持ち込めばいい話ではないでしょうか。感染症管理のため、TNR目的で野良猫を持ち込むことをいやがる動物病院が多いことは事実ですが、譲渡前提で動物愛護管理センターで飼われていた猫であれば、文句はないのではないでしょうか。

また、そもそもそういう計画があったのであれば、手術経験がある獣医師を事前に雇用することは十分に可能だったのではないでしょうか。手術経験のある獣医師を非常勤職員として雇い入れ、避妊去勢手術だけに従事させ、年間数百件の避妊去勢手術を実施している自治体も実際にあります。たとえ手術経験がなくても、獣医師であれば手術助手くらいはできるでしょうから、専門の非常勤職員を1名雇用するだけで済む話です。

執刀させられる獣医師も不幸ですが、そういう人に施術される動物も気の毒です。見栄を張らずに、素直に外部委託でいいじゃないですか。地元の獣医師会と協定を結び、手術を委託すれば、行政も楽ですし、獣医師会も「殺処分ゼロ」に協力できたということで、めでたしめでたしです。

使用目的を明確にして、必要な費用について寄付を募るのが、CFの正しい使い方です。設備費に使うのであれば、例えば「手術室の整備に必要な400万円」という形で募るべきです。