殺処分とは

行政機関に収容された動物は、何らかの「処分」を受けます。「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」(平成18年環境省告示第26号)において、「保管動物の処分は、所有者への返還、飼養を希望する者への譲渡し及び殺処分とする」とされています。一般的な米国のアニマルシェルターにおける収容動物の処分は「返還、譲渡、移送、安楽死」とされていますが、日本では統計上「移送」は「譲渡」とみなされるため、日本における収容動物の処分は「返還、譲渡、殺処分」となります。

余談ですが、日本の環境省の統計に「移送」という概念はなく、明らかに「移送」に該当すると思われる、他自治体への動物の引き渡しも、他自治体への「譲渡」とみなされます。動物愛護団体への引き渡しも当然「譲渡」です。死ぬまで動物の面倒を見る団体(いわゆる「サンクチュアリ」)や、使役動物を養成する団体に引き渡すのは「譲渡」なのでしょうが、他者への譲渡を前提にした団体に動物を引き渡すことを「譲渡」と呼ぶことに、私は釈然としないものを感じています。そこに「譲渡したのだから後は知らないよ」という行政の本音が透けて見えるのは私だけでしょうか。

殺処分という言葉は、ガス室一斉処分時代の香りがするえぐい言葉で、私は個人的に好きではないのですが、日本では行政用語として定着しています。殺処分という用語は、環境省がまだ環境庁だった頃の通知「動物の殺処分方法に関する指針」(平成7年7月4日 総理府告示第 40 号、以下「指針」と略す)で定義されています。

 

(1)対象動物  この指針の対象となる動物で、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号、以下「動愛法」と略す)第44条第4項各号に掲げる動物 

(2)殺処分動物  対象動物で殺処分されるものをいう。

(3)殺処分  殺処分動物を致死させることをいう。

 

ちなみに、動愛法「第44条第4項各号に掲げる動物」とは、「牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」と「人が占有している哺乳類、鳥類又は爬虫類」、すなわち動愛法上の「愛護動物」を指します。

動愛法にも殺処分という言葉が使われていて、環境省による動愛法の英訳では、殺処分は “slaughter” です。これは「虐殺」「と殺」の意味です。“euthanasia”(安楽殺)ではないのです。ちなみに前述の指針の英訳では、殺処分は “destruction”(破壊、滅亡)です。同じ省庁の同じ言葉の英訳が、文書によって異なる理由は謎ですが。