移送の法制化


地方分権により、様々な権限が国から都道府県そして市区町村に移譲されることは、一般論としては良いことです。しかしその反面、行政のタコツボ化や二重行政が進んでいることも事実です。

例えば動物愛護管理行政の実施主体は都道府県ですが、動愛法の規定により、政令市等(政令指定都市、中核市、保健所政令市、特別区)には権限が委譲されています。A県の中に中核市Bがあれば、A県とB市はそれぞれ独立した自治体とみなされます。B市が独自に動物愛護管理センターを設置することも可能です。

前置きが長くなりましたが、地方分権の進展により、行政の事務が都道府県または市区町村レベルで自己完結するようになりました。ある自治体で収容されている動物は、その自治体で譲渡を待ちます。老犬や大きな傷痕がある動物など、地方では譲渡が難しくても、人口の多い地域で募集すれば譲渡先が見つかるかもしれません。しかし自治体を超えて動物を移動させることは、なかなか難しい現状があります。

現在それをフォローしているのは、民間団体が運営するマッチングサイトです。全国の収容動物をホームページに掲載し、お目当ての子が見つかった人は地元の動物愛護団体に引き出しを依頼し、そこから譲渡を受けるというシステムです。費用を負担すれば、航空便での輸送も可能です。

このシステムの最大の問題は、譲渡希望者が実際に動物を見ることなく、譲渡が決まってしまうことです。どんなによく撮れた写真や動画であっても、実物の情報を全て伝えることは難しいですし、譲渡を受けるということは生涯の伴侶を得ることですから、その決定には実際に会った際の直感やフィーリングなども重要な要素です。お見合い写真だけで結婚を決めないのと同じです。また無秩序な輸送は、感染症の蔓延や動物へのストレスなど、他の問題も引き起こします。

そこで提案したいのが、全国の収容動物をデータベース化し、必要に応じて自治体間で動物を移送し合うシステムを構築することです。子犬の需要が高いが子犬がほとんど収容されない都市部や、野犬が多く常に子犬が収容される西日本の一部自治体など、地域はそれぞれ特有の課題を抱えています。環境省には「問題意識は地域によって違う」という口実で地方に丸投げするのではなく、各地域の問題を調整して収容動物の幸福につなげることができるのはやはり国だという発想を持っていただきたいと願っています。