安楽殺の法制化


(9月10日更新)

殺処分をゼロにするためには、殺処分を法律で禁止すればよい。簡単な話です。

なぜ殺処分を禁止できないか?それは、真にやむを得ない理由で収容動物を致死処分せざるを得ない場面があるからです。根本的な問題は、環境省が「単なる行政都合の殺処分」と「やむを得ない安楽殺」をないまぜにして「殺処分」と定義していることにあります。さらに環境省の統計上、収容中の死亡も「殺処分」に含まれます。もう、訳が分かりません。

最近、環境省も殺処分を「譲渡に向かない動物の殺処分」「譲渡可能な動物の殺処分」「収容中の死亡」の3つに分類して数値を公表していますが、その分類も極めてあいまいです。さらに問題なのは、一部の都市部の自治体が環境省の定義を無視して、「譲渡可能な動物の殺処分」がゼロであることだけをもって「殺処分ゼロ」を宣言するなどという、抜け駆けにも近い愚行を行い、環境省もそれを黙認している現状です。前提条件をすっ飛ばして「殺処分ゼロ」という言葉だけが独り歩きし、他の多くの自治体に対する「おたくはなぜゼロにならないのか」というクレームの根源となっているのです。

私の提言は、単なる行政都合の殺処分の禁止やむを得ない安楽殺の法制化です。

「やむを得ない安楽殺」は、次の3つを想定しています。

1.  獣医学的理由

・重度の疾病や傷害等により、動物の苦痛を取り除く方法が安楽殺しかないと獣医師が判断した場合

・他の動物に感染し重篤な症状を起こす可能性がある感染症に罹患し、治癒の見込みがないと獣医師が判断した場合

・上記以外で、収容を続けることが動物福祉を著しく損ねると獣医師が判断した場合

2. 公衆衛生上の理由

・人間に感染し重篤な症状を起こす可能性がある感染症に罹患し、治癒の見込みがないと獣医師が判断した場合

・狂暴な気質により譲渡先における咬傷事故が危惧され、矯正の見込みがないと獣医師が判断した場合(動物行動学の専門家による助言を求めることが望ましい)

3. 他法令の規定による安楽殺(家畜伝染病予防法など)

 

 

自治体によっては、かなり厳しい規定になるかもしれません。そのため、移送や預かりボランティアの法制化をセットにして、譲渡の促進と収容施設の負担軽減を図る必要があるのです。