環境省の「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」にはこう書かれています。
また、生命尊重、友愛等の情操の涵養の観点から、特に子どもが心豊かに育つ上で、動物との触れ合いや家庭動物等の適正な飼養の経験が重要であることが指摘されており、適正な方法による機会の確保が求められている。
誰がどう「指摘」しているのかは謎ですが、概ね間違ったことは言っていないと思います。では、「家庭動物等の適正な飼養の経験」は分かるとして、「動物との触れ合い」とは何なのでしょうか。皆さんが「動物との触れ合い」と聞いてまず頭に思い浮かぶのは、一部の動物園や行政機関で行われている、モルモットやウサギとの「触れ合い」でしょう。しかし厳密にいうと、これは「触れ合い」ではなく単に「触れている」だけです。
犬や猫のように、長年にわたって人間とのコミュニケーション能力を高めながら改良されてきた動物であれば「触れ合い」は成立するでしょう。多くの犬や猫は、人間と遊ぶのが大好きです。譲渡対象の犬猫を様々な人と触れ合わせて、人に慣れさせることは、譲渡のチャンスを増やすことにもつながります。双方にとって精神的なメリットがあってはじめて、「触れ合い」は成立するのです。モルモットやウサギに「触れる」ことで、人間は満足するでしょうが、触られる動物たちにとって、それは単に怖いだけです。なぜなら、彼らは被捕食者であり、常に捕食者からの恐怖におびえながら生きているからです。実際に、モルモットとの「触れ合い」の動物福祉上の問題について、一部の研究者が声を上げ始めています。
「触れ合い」が成立する動物は犬や猫、あとはせいぜい馬くらいでしょう。小型の愛玩鳥も向くとは思いますが、負担が大きすぎます。また、フクロウやハリネズミなど様々な動物と「触れ合え」るカフェが存在しますが、そこにおける動物の管理云々よりも、そのコンセプト自体が動物福祉上問題があるように私は感じています。
モルモットとの「触れ合い」は子どもたちに大人気です。もしモルモットとの「触れ合い」をやめてしまったら、きっと子供たちは「どうしてモルモットと遊べないの?」と問いかけるでしょう。そのときに、モルモットと犬猫の違いについて説明してあげるのが、本当の動物愛護教育なのではないかと、かつて業務命令の名のもとに、さんざん子どもたちにモルモットを触らせてきた張本人が申しております(^_^;)