譲渡適性の話 その2

「動物愛護管理行政事務提要」における動物の殺処分数は、譲渡適性の有無で分類されています。そして環境省は、当面「譲渡適性があるにもかかわらず、殺処分される犬猫」をゼロにすることを目指しています。つまり、犬猫を殺処分するか否かは、譲渡適性の有無で判断されるのです。各自治体が譲渡適性について判定するためのマニュアルが、環境省の「譲渡支援のためのガイドライン」です。

そこには譲渡に適している例として、例えば「骨格系の異常(骨折・脱臼・先天性異常等)が見られない」と書かれています。一部の自治体は、このマニュアルの記述を盾に「骨折だから譲渡不適」と簡単に判定しています。特に猫は交通事故が多く、顔面がグチャグチャになっていたり、骨盤が複雑骨折しているケースもよくあります。開放骨折や粉砕骨折など、予後不良の可能性が高い場合もあります。こういうケースが「譲渡不適」というのであれば理解できます。場合によっては、安楽殺も検討しなければなりません。しかし脛骨の単純骨折を「譲渡不適」と判断して、何の治療もせずに、収容期限が満了したら殺処分というのは、少し違うような気がします。

しかしそれを責められない事情もあります。どこの自治体も、予算と人員が不足しています。免許を取得してから何年(何十年?)もメスを握っていない公務員獣医師に外科手術をやれというのも酷ですし、そもそも手術室が整備されているか否かという問題もあります。地元獣医師会とタイアップして、そこをうまくやっている自治体もありますが、手術ができたとしても、完治するまで収容しておくにも予算と人員が必要です。完治したとしても絶対に譲渡できる保証もありません(若い動物ほど譲渡の成功率が高いのは周知の事実です。治療のために長期滞在することは、譲渡の成功率が下がることを意味します)。そういう事情もあり、特に収容数が多く、収容能力が低い自治体ほど、譲渡不適を判断する見切りが早くなってしまうのです。その言い訳として「マニュアル」の不正利用(?)が行われているのです。逆に犬猫の収容数自体が激減していて収容能力に余裕がある、特に都市部の自治体では、じっくりと様子を見ることが可能です。そして獣医師会やボランティアをうまく使えば、「殺処分ゼロ」も可能です。

つまり譲渡適性は、動物の状態というよりも、行政機関の都合、すなわち動物の入場数と収容能力によって判定されます。犬猫にとっては、都道府県だの市町村だのはどうでもいい話なのですが、どこの自治体で収容されたかによって、生きるか死ぬかが決まってしまうのです。国が統一基準を設けて各自治体に従わせればいいのに、環境省は「地域によって事情が異なること」を理由に、リーダーシップをとろうとはしません。