犬や猫がCOVID-19(SARS CoV-2「新型コロナウイルス」感染症)に感染した、またはPCR検査で陽性反応を示したとの報道がありますが、詳細が報道されないため、刺激的な見出しだけを見て「ペットは怖い」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。また、特に高齢の方から「コロナが怖いから近所の野良猫を駆除したい」という相談が寄せられています。そこで、現時点で私が知る情報について、簡単にまとめておきます。
私が参考にしている、UCデイビスのシェルターメディスンのホームページ(sheltermedicine.com)のCOVID-19特設サイトには、このようにまとめられています。
・人間への感染の主なリスクは、他の人間であることに変わりはありません。
・エビデンスは、いくつかのコンパニオンアニマルは、COVID-19に感染した人間との密接な接触から感染する可能性があることを示唆しています。
・現時点で、ペットがこの人間の病気の蔓延に寄与していることを示唆する証拠はありません。
・WHO、OEI、およびCDCは、ペットをこれまで通り飼育すること、および発症または感染している人がペットとの接触を制限することを引き続き推奨しています。
3月に香港でSARS CoV-2の低レベル感染が認められた犬が死亡したというニュースがありましたが、この犬は他の疾患で死亡した可能性もあり、飼い主が剖検を断ったため、死因ははっきりしていません。5月にオランダのミンク農場で発生したSARS CoV-2感染は、人間とミンクとの間に相互感染があったと結論付けられ、詳細については調査中です。日本でも、8月に感染者の飼い犬がPCR検査で陽性反応を示したとの報道がありましたが、本当に感染しているかどうか、抗体検査中であると聞いています。世界のペットの感染状況については、米国獣医師会(avma.org)の特設サイトにまとめられています。そこにも書かれていますが、PCR検査陽性イコールSARS CoV-2感染とは限らないことに注意が必要です。汚染した物体をなめたり、感染した人間との濃厚接触により付着したウイルスの遺伝子を拾っている可能性もあるので、感染を確認するためには、抗体検査などの確定検査が必要なのです。
大事なことは「ペットとの濃厚接触を避ける」ことと「ペットに触る前後の手洗い」です。これは何もCOVID-19に限ったことではなく、その他の感染症予防にも役立ちます。感染症がペットから感染しない、またペットに感染させないためにも、節度を持ったつき合いが必要なのです。