譲渡適性の話 その3

「譲渡支援のためのガイドライン」では、「気質判定・反応行動評価」も行うことと記載されており、具体的方法についても記載されています。例えば成犬についての選別基準は次のとおりです。長くなりますが、あえてひととおり引用します(評価方法については詳細なマニュアルがありますが、本題から外れるので省略します。

このマニュアルでは、収容後3日目で一次判定、8日目で二次判定して最終的に譲渡候補を選定するとされています。つまり、重度の病気やケガ、狂暴、または懐かない犬は、3日目で譲渡不適と判断され、殺処分の対象になるのです。病気やケガについては前にも述べたのでここでは触れません。

野外で繁殖した、いわゆる野犬(「野犬」は行政用語で、学術的に「野犬」とはディンゴのような野生の犬を指すそうです。当然日本に「野犬」はいません)の成犬は、ほとんど一次判定で譲渡不適と判定されるでしょう。つまりこのマニュアルは、野犬の成犬は譲渡不適であると暗に示しているのです(と私は思っています)。しかもそれを収容3日目で判定し、殺処分の対象にすることを容認しているのです。おそらくこのマニュアルは、野犬を知らない人が作ったのでしょう。

狂暴性が低い野犬であっても、収容8日目に二次判定で合格することは難しいと思われます。これをクリアできるのは、元々人に慣れている元飼い犬か村犬(いわゆる地域犬)くらいでしょう。しかし、時間をかけて野犬を慣らしながら、二次判定で合格するようになるまで飼うような余裕は、どこの自治体にもないでしょう。また、慣れない犬を無理やり譲渡することは事故のもとです。西日本の、野犬の収容がやたらに多い自治体の殺処分数がなかなか減らないのは、そういう事情もあるのです。

そこで行われているのが、野犬の扱いに慣れた動物愛護団体への譲渡です。そこで時間をかけて慣らせば、多くの野犬が譲渡可能な状態になります。また、犬の訓練士など高いスキルを持った人への譲渡も可能です。マニュアルの最後には、そっとこう書かれていますから。

 

*譲渡希望者の知識と能力・経験も判断の対象となる。

 

「40点に少々満たない」という表現も絶妙です。結局、運用次第でどうにでもなるのです。