遺失物法の改悪、その後。

知事部局で動物愛護に関する仕事をしていると、警察組織は本当に犬猫が嫌いなのだなと勘ぐってしまいます。そう思ってしまうほど、警察官からは「動物に関わりたくないオーラ」がにじみ出ています。たしかに遺失物法の改悪によって、犬猫については知事部局への丸投げに成功しましたが、警察はどさくさに紛れて、本来は警察が処理すべき案件についても、さりげなく丸投げしてきます。

警察が知事部局に丸投げできるパターンは3つしかありません。「拾得者が動愛法の規定による引き取りを求めた場合」「負傷した犬猫が持ち込まれた場合」「狂犬病予防法の規定に基づく抑留義務のある犬が持ち込まれた場合」の3つです。最期の1つは問答無用の規定ですから、狂犬病予防員(=保健所職員)が動かねばなりません。

「拾得者が動愛法の規定による引き取りを求めた場合」については、これはあくまでも拾得者の意志によるものですが、あの手この手で善良な市民を丸め込むのは警察の常套手段ですから、ほとんどの場合、拾得者の意志を形成したうえで、知事部局に投げられます。

「負傷した犬猫が持ち込まれた場合」も動愛法の規定に基づきますが、その趣旨は虐待の探知にあります。ですので、警察に負傷した動物が持ち込まれ、かつ虐待が疑われる場合は警察自らが動かなければなりません。背中に包丁が刺さった人が警察署に駆け込んできたのに「救急車に乗せて一件落着、あとは病院からの通報を待つ」なんてことはないでしょう。それと全く同じです。しかし実際には動愛法の規定を盾に、知事部局に投げてきます。もっと恐ろしいことに、平気で「段ボール箱に入れて放置されてたんですよねぇ~」なんて言いながら子猫を持ち込んできたりします。心の中で「それ、遺棄事件ですから~残念! 犯罪行為見逃し斬りッ!」(古い?)とツッコミを入れながら、「遺棄事件の証拠物件として、いつまで保管しましょうか?」と嫌味を言うのが精一杯ですが。

犬や猫を拾った人が保健所ではなくあえて警察に届け出るということはどういうことか、警察は全くわかっていません。どうにかして飼い主を見つけて、返してほしいからなのです。保健所に預けたら、収容期限が来たら殺処分されてしまう(しかも遺失物法に準じた2週間の収容期限も保証されない)かもしれないからなのです。警察は「飼い主が見つからなかったらそれはそれで仕方ない、少なくとも2週間は保管してほしい」という拾得者の気持ちに寄り添うべきです。知事部局に丸投げするのではなく、保管を依頼してください。もっとも、多くの自治体は「2週間も保管できないから、丸投げしてくれ」と答えるでしょうが。「保管施設が足りないから、早く殺処分する」のではなく「保管施設を充実させる」という発想にならないのは、何度も言うように、法的根拠がなく予算が付かないからです。