動物の所有者について その2

所有者不明として引き取った、または負傷で収容された犬猫については、所有者が警察や動物愛護管理センターなどに迷子の届け出をしていれば、かなりの確率で飼い主の元へ戻されます。ほんの十数年前までは、首輪のある猫が殺処分されたり、迷子の届け出と照合せず飼い猫の可能性があった猫が殺処分されるといった「事件」があちこちで起こっていました。今ではそういうことはないとは思いますが(いや、ないと信じたい)。

しかし迷子の届け出を出していただかないと、返すことができない場合もあります。私がかつて経験した例をお話しします。交通事故を疑う外傷で危篤状態の成猫が収容され、私は苦痛を取り除く方法が安楽殺しかないと判断し、処置しました。数日後、飼い主を名乗る方から連絡があり、写真を確認してもらったところ、本当の飼い主であることが判明しました(器物損壊の件はご納得いただきました)。せめて迷子の届け出をしていただいていれば、この子は飼い主さんに看取られながら死ぬことができたかもしれません。

純血種の犬が交通事故疑いの外傷(命に別状はないが重傷)で収容された際に、おそらくブリーダーが装着したであろうと思われるマイクロチップの反応があり「これで飼い主がわかる」と喜んだのもつかの間、情報が登録されていませんでした。万事休すかと思った矢先、市役所から「飼い主が判明した」との連絡があり、無事お返しすることができました。珍しい犬種だったため、その犬種の所有者全てに連絡したとのことです。これは本当にラッキーなケースです。ちなみに動愛法第7条第3項には、所有者の努力義務として「逸走を防止するために必要な措置を講じる」ことが定められています。また狂犬病予防法で、鑑札や注射済票の装着が義務付けられていますので念のため。またマイクロチップは、情報を登録しないと何の役にも立ちません。マイクロチップもよいですが、全国民が読み取り機を持っているわけではないですから、私は迷子札をお勧めします。

遺失物法の規定が適用されれば、拾得物は公告後最短2週間で拾得者の所有物になります。しかし動愛法の規定が適用されると、当然公告は行われないので、所有者は変わりません。狂犬病予防法の規定による抑留の公示期間は、公示後2日とされていますが、公示期間満了をもって所有権が移るわけではありません。公示はあくまでも、処分(殺処分とは限りませんが)の通告の意味合いが強いのです。ほとんどの自治体が、動愛法の規定が適用された場合の公示期間を条例で設定していますが、それも同じ意味です。

米国では、シェルターに収容された動物の所有権は、公示期間が満了すると管轄の公営シェルターに移ります。その後必要に応じて、民間のシェルターに所有権を移転します。日本も米国からまだまだ学ぶところは多いようです。