現在日本の自治体で行われている犬猫の殺処分の方法について、私なりに検証してみました。ソースは伏せますが、都道府県のみを対象とした独自調査です。そこで実施されている殺処分の方法を、安楽殺という観点から分類したのが下の表です。判定に用いた文献は、環境省の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準の解説」と、私の愛読書である「Shelter Medicine for Veterinarians and Staff(第2版)」です。
この表のAに示した方法は、文句なく安楽殺であるといえます。Bには、何かと議論の的になる炭酸ガス(単独使用)と、ペントバルビタールNa以外のバルビツレートを入れました。たしかに米国獣医師会のマニュアルには「バルビツレート」とざっくり書いてあるため、「バルビツレート」が安楽殺薬として推奨されていると日本では紹介されています。しかし米国では事実上「バルビツレート=ペントバルビタールNa」であり(米国で最も読まれているであろうシェルターメディスンのテキストには、安楽殺薬としてペントバルビタールNa以外のバルビツレートは一切出てきません)、その他のバルビツレートについては知見が不足しています。今後もリサーチを続けたいと思います。
Cには安楽殺の方法として積極的に推奨されていない、もしくは安楽殺であるか否かが不明な方法を挙げています。意識消失下の筋弛緩薬の投与は、理論的には安楽殺のはずですが、積極的に推奨はされていません。ペントバルビタールNaを含むバルビツレートの経口投与は、安楽殺前の鎮静には有効とされていますが、単独で安楽殺が実現できるか否かは不明です。プロポフォールはバルビツレートと作用機序が似ている注射麻酔薬で、安楽殺前の鎮静には有効とされていますが、安楽殺薬として推奨はされていません。
ペントバルビタールNaの薬剤が入手できないのであれば、工業試薬としてのペントバルビタールNaを入手して、それを水に溶かして同じ濃度にして使えばよいと、ものすごいことを考えた自治体もあります。たしかに物質としては同等かもしれませんが、効果も同等であることが立証されているのでしょうか。また医薬品でない物質を動物に投与するという発想そのものに、「動物だからいいじゃん」という不謹慎さを感じるのは私だけでしょうか。
現在日本で実施されている殺処分法のうち、完全にアウトなのが、筋弛緩薬や塩化カリウムの単独使用です。いまだにこんな手段が使われていることにも驚きますが、それを外部に口外してしまう(ヤバいことだと感じていない?)ことに2度びっくりです。
次回はこの指標を用いて、全国の殺処分法について採点したいと思います。