安楽殺の観点から殺処分法を考える(補足)

前回前々回に、各自治体で行われている殺処分について検証しましたが、いくつか補足しておきます。

●殺処分と安楽殺の違いとは?

よく「殺処分と安楽殺は違う」と訳の分からないことを書いている人がいますが、動愛法の規定によると、殺処分は安楽殺でなければならないことは以前に述べたとおりです。つまり現行の日本の法体系においては、殺処分=安楽殺のはずです。ここで「はずです」と書いた理由は、前回述べたとおりです。

●なぜ「炭酸ガスの単独使用」がB判定なのか

炭酸ガスの単独使用は安楽殺であると、環境省も認めています。米国においても一部の州で禁止または制限されていますが、国として禁止はされていません。なぜ米国の一部の州で禁止されているか、また不適切な実施による問題点については前述のとおりですが、それは他の方法も同じです。

●なぜ「その他のバルビツレート」がB判定なのか

たしかに「米国獣医師会:安楽死に関する研究会報告2000(Ⅳ)」(日本獣医師会雑誌第58巻(2005))に「麻酔に用いられるすべてのバルビツール酸誘導体は、静脈内であれば安楽死に用いられる」との記述があることは承知しています。しかし環境省の「基準」にはペントバルビタール以外のバルビツレートに関する具体的な記述はないため、積極的に推奨はされていないと判断しました。とはいえ米国獣医師会の見解に敬意を示し、CではなくB判定にしました。ちなみに「Shelter Medicine for Veterinarians and Staff(第2版)」に、ペントバルビタール以外のバルビツレートに関する記述がないことから、少なくとも米国のアニマルシェルターにおいては、ペントバルビタール(およびその製剤)のみが一般的に使用されているものと考えられます。

●なぜCの方法はアウトではないのか

AおよびB以外の方法は、少なくとも日本と米国では、安楽殺法として推奨されていない方法です(ただし、バルビツレートの経口投与やプロポフォールを、AやBの方法で安楽殺する際にの前処置薬として用いることは、通常行われています)。しかし各自治体が独自のリサーチにより、その方法が安楽殺であるという確証を持っているのであれば、他者がとやかく言うことではないと私は考えます。「医薬品ではないペントバルビタールNaの投与」はあくまでも医療倫理の問題であり、それが安楽殺であれば結果的にセーフであると考えます(この方法の正当性を主張するには、かなりの説明が必要と思いますが)。