そもそも安楽殺とは

ここで安楽殺についてまとめておきます。まず、なぜ私があえて「安楽殺」と称しているかというと、動物は自分の意志ではなく、人間の判断で致死されるので、致死を行う人間の立場から「安楽殺」と称しています。人間の場合は自ら死を望みそれが実現されるのですから、死を希望される方の立場から「安楽死」と呼ぶことに何ら差しさわりはありません。このブログでは動物の致死処分を扱っているので「安楽殺」と書いています。

安楽殺とは、苦痛を与えることなく動物を致死させることです。個体の死は、脳機能が停止することにより完結します。いきなり脳機能だけが停止するような死に方もあるのでしょうが、通常脳機能の停止は、心肺機能の停止による酸素不足の結果として起こります。つまり、苦痛を与えることなく心肺機能の停止から脳機能の停止に至らせることが安楽殺といえます。しかし心肺機能の停止には、息苦しさや痛みなどの苦痛を伴うので、安楽殺を実現するためには、心肺機能が停止する前に意識を消失させる必要があります。そのため、バルビツレートや吸入麻酔薬といった麻酔薬や、中枢神経系抑制作用がある炭酸ガスが安楽殺に用いられるのです。

塩化カリウムや筋弛緩薬など、中枢神経系抑制作用がない薬物をいきなり投与すると、心肺機能停止の際に苦痛を感じます。

ですので、これらの薬物を安楽殺に使用する際には、麻酔薬であらかじめ意識を消失させた上で投与する必要があります。

また中枢神経系抑制作用があっても、炭酸ガスの不適切使用などによって、意識消失より前に心肺機能が損なわれる場合もあります。

安楽殺は原理さえ押さえれば、難しいことではありません。難しいのは「その薬物」「その用量」「その投与経路」が、確実に最初に意識消失を引き起こすか否かということです。そこがはっきりしない薬物はやはり使いにくいのです。