【2020年版】米国獣医師会の安楽殺ガイドライン

動物の安楽殺について書くにあたり、AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals(米国獣医師会安楽殺ガイドライン)くらいは読んでおこうと思いAVMAのホームページを見ると、迂闊にもガイドラインの2020年版が公開されていました。日本よりも獣医学が進んでいるといわれる米国において、安楽殺についての知見がまとめられているので非常に参考にはなりますが、日本と米国では法体系や流通している薬物も異なりますし、このガイドラインはアニマルシェルターの獣医師のみではなくすべての獣医師を対象にしているので、日本の殺処分への応用という意味では、あくまでも参考としてとらえています。行政機関における殺処分はあくまでも「行政処分」ですから、国(環境省)が示した方法(いわゆる「基準」)で行うのが、公務員としての最適解ではないかと私は考えています。

前置きが長くなりましたが、ANMAガイドライン(2020)の、犬猫に関する記述をざっくりとまとめたのが下の表です。

繰り返しますが、これは米国のマニュアルですので、米国の事情に基づき書かれています。例えば「意識消失下の塩化カリウム」は安楽殺の方法として通常用いられていますが、米国ではFDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていないので「代替手段がない場合にのみ実施」とされています。また、Tributame euthanasia solutionやT-61といった、あまり聞かない薬物の名前があったりします。

一酸化炭素や二酸化炭素は「投与に必要な条件を満たすことができる場合、安楽殺に効果的に使用できる」としながらも「これらの条件は、実際に対応するのは困難でコストがかかる可能性があり」「猫と犬の日常的な安楽殺には推奨されない」とされています。さらに「自然災害や大規模な病気の発生など、異常またはまれな状況で考慮される場合がある」とし、「可能であればコンパニオンアニマルには、条件とデメリットが少ない別の方法を推奨する」と締めています。その上で「銃殺」や「貫通ボルト」と同じ「日常的な安楽殺には推奨されない」方法に位置付けられています。

その他、「非バルビツレート系注射麻酔薬の過剰投与」が推奨され、例として「ケタミン+キシラジン」や「プロポフォール」が挙げられています。

このブログは米国の事情を紹介することが目的ではないので、このくらいにしておきます。興味のある方は、AVMAのホームページにアクセスしてください。