カウンセリングの重要性 その1

飼い主から犬猫の引き取りを求められた場合、動愛法の規定を持ち出し「終生飼養が義務ですから」と冷たく拒否して追い返すことは楽で、余計な仕事も生まれません。しかも収容数減少ひいては殺処分数減少につながり、自治体としてはいいことずくめです。しかし前回もお話ししたとおり、それは単なる問題の先送りであって、一歩間違うと遺棄や虐待、ネグレクトを誘発する危険な行為です。一方、突然のライフイベントでパニックになり「もう飼えない」と思い込んでしまっている飼い主もいます。

犬猫の引取り依頼者を3つに分類したのが下の図です。

①のように、ペットへの愛情が残っていて、真にやむを得ない(と本人が思っている)理由で引取りを求める飼い主の話を聞き、思いとどまらせることは意味があると思います。逆に②や③のように、ペットへの愛情が冷めた。もしくは最初からないようであれば、翻意は難しく、しかも引取り拒否が動物福祉の低下を招くパターンです。

それを判断するために、必ず詳しく事情を聴取することが必要です。可能であればカウンセリングの手法を用いたいところです。飼い主はペットを手放す気満々で行政機関にやって来ます。引取り拒否を前提にするのではなく、ニュートラルに飼い主の話を聞きましょう。重要なのは「ペットを手放すに至った理由」と「現在の飼育環境」です。それすらまともに答えず「さっさと引取れ」というような飼い主には、動物を飼い続ける資質はありませんから、お望み通りさっさと引取りましょう。その上で、もう二度と動物を飼わないよう説教して差し上げましょう。念書を書かせるのも有効です。とにかく「面倒くさい目にあった」という経験が重要です。

話は戻りますが、引取りを希望する理由を聞き取り、それを解決するための方法を一緒に考えることが重要です。この過程で、飼い主に思わぬ気づきを提供できる場合があります。例えば「引っ越し先がペット禁止だから」という理由で引取りを求める飼い主に「最初からペットが飼える物件を探す」という発想がなかったということがたまにあります。それに気づき「これでこの子と一緒にいられます」なんてこともあります。

飼い主の病気や家族のアレルギーなど、ペットへの愛情はあっても本当にやむを得ない理由で手放さざるを得ない飼い主もいます。そういう方には、新しい飼い主を探す方法をレクチャーした上で、一旦お引き取りいただきます。ここで動愛法の引取り拒否事由「譲渡先を見つけるための取組み不足」が役立ちます。ペットへの愛情があれば、素直に従っていただけます。「どうしてもだめなら引取ります」と一言添えることを忘れないでください。間違っても「引取り屋」の手に渡らないように。(続く)