カウンセリングの重要性 その2

話を聞いていれば「この人はペットへの愛がないな」というのは大体わかります。ペットへの愛情が失せた、またはそもそも愛情がない人のうち、社会常識がある人については、動愛法の規定を提示し、新しい飼い主を探す努力をしていただきます。もちろん、やり方をレクチャーすることも必要です。本来終生飼養すべきペットを自己都合で手放すのですから、それなりの対価を支払っていただかなければなりません。数千円の手数料だけで済むと思ったら大間違いです。

ペットへの愛情を失った飼い主の中には、カウンセリングの過程で愛情を取り戻し、引取り依頼を取り下げる方が時折おられます。しかしその場合、一時の感情で終わらないよう、事後のフォローが必要です。

ペットへの愛情がなく社会常識のない人については、何を言っても無駄ですから、素直に引取ります。そんな人の元に動物を返すわけにはいきません。特に年配の猟師の中には「グダグダ言うなら山に棄てるぞ、銃だって持ってる」と騒ぎ出す方がいます。こうなると犯罪行為を未然に防ぐため、引取らざるを得ません。

現在の飼育環境を聞き取ることも重要です。ネグレクトや多頭飼育崩壊が疑われる状況であれば、動愛法施行規則で定める「生活環境の保全上の支障を防止するために必要と認められる場合」に該当し、また動物福祉の観点から、引取らなければなりません。そこまでではないにしても、不適切な飼い方によって将来的に動物福祉が損なわれる可能性があるようなケースでは、積極的に引取るべきです。

結論として、動物福祉の観点から、ペットへの愛情が失せた、または最初から愛情がない飼い主から引取り依頼を受けた場合、最終的には引き取らざるを得ないと私は考えます。その場合ただ引き取るのではなく、動愛法の規定に基づく指導が必要です。

この仕事をしていると、とにかく自覚のない飼い主が多すぎてうんざりします。動物愛護管理センターの重要な業務として「動物愛護思想の涵養」があります。「そんな無駄な仕事よりも、1頭でも動物を助けろ」というクレームが寄せられることがありますが、日本人の動物愛護に対する認識の著しい欠如が、動物福祉の低下、ひいては殺処分につながっていること、また学校教育の場で動物愛護教育の機会がない(時間もスキルもいない)ことを考えると、決して無駄な仕事ではありません。しかし獣医師がやるべき仕事ではないとは思います。奈良県のように現役教員が動物愛護センターに出向し、動物愛護教育に携わったのち、スキルを身に着けた教員が学校現場に戻るというシステムは素晴らしいと思います。