野良猫の引き取り

令和元年の動愛法改正(令和2年6月1日施行分)によって、都道府県等は「周辺の生活環境が損なわれる事態が生ずるおそれがないと認められる場合」においては、所有者が判明しない犬猫の引取りを拒否できるようになりました。もっとも、鑑札や注射済票が付いていない犬は狂犬病予防法の規定で抑留義務がありますし、負傷動物は動愛法の規定により収容義務があります。また幼齢で自活不能の子犬や子猫が持ち込まれれば、動物福祉の観点から引取らざるを得ません。つまり問題になってくるのは、所有者が判明しない、健康で自活可能な猫の扱いです。

かつて動物福祉の観点から、所有者が判明しない猫は積極的に引取り、動物管理機関に収容ののち、所有者に返還するか新しい飼い主を見つけることが望ましいとされ、実際に旧法ではそのように運用されていました。猫は伴侶動物として人間とともに進化した動物であり、人間の庇護がなければ生きられず、また野良猫は常にけがや感染症の危険にさらされ、寿命も数年であるとされていたからです。しかし動物管理機関への収容には、殺処分の問題が常に付きまといます。特に野良猫の成猫は性格的に「譲渡不適」とみなされ、殺処分の対象になりがちです(米国も同様の問題を抱えています)。

しかし米国の最新の知見によると、TNR(Trap-Neuter-Return:野良猫を捕獲し、避妊去勢手術ののち元の場所に戻す活動)目的で捕獲されたcommunity cat(=野良猫)は概ね健康状態に問題はなく、獣医学的理由で安楽殺が必要とされた野良猫は1%未満であると報告されています※。またTNR実施後の野良猫は平均3~5年生存していたとの報告もあります。また野良猫は拾われて飼い猫になるチャンスもあります(UCデイビス「シェルターとcommunity catのための新しいパラダイム(2015) 」https://www.sheltermedicine.com/library/resources/?r=new-paradigms-for-shelters-and-community-cats#what%20are%20community%20cats)。これらのことから、米国ではアニマルシェルターは特別なケアが必要な猫(負傷猫や幼齢猫)のケアに専念し、健康な野良猫はTNRを実施したうえで野に置くという考え方が主流になりつつあります。

また日本においても、環境省は地域猫活動(=TNR前提)を推進しつつ改正動愛法で野良猫の引取り拒否を打ち出し、また動物福祉のチェック団体といえる日本動物福祉協会も、野良猫の避妊去勢手術の助成や捕獲機の貸し出しなどTNRの支援を行っています。少なくとも日本においては、行政も民間も「TNR推進」の流れができているといえます。

 

※この報告については、TNR推進派が都合の悪い事実を隠している(例えば、体調の悪い野良猫は本能的に身を隠しており、決して捕まることはない)として、米国内においても疑問視する意見があることを付け加えておきます。