「動物の処分方法に関する指針の解説」を読む その1 殺処分ができる場合

不勉強というのは恐ろしいもので、「動物の処分方法に関する指針」※が告示された際に総理府から出された「動物の処分方法に関する指針の施行について(平成7年8月3日総管第357号)」という通知に「動物の処分方法に関する指針の解説」という文書が添付されていました。これは「指針」が告示されましたという通知文ですので、「指針」の本体と違い、当時の担当者でもない限り、読んだことがない方も多い(私も含めて)のではないかと思われます。にもかかわらず、かなり重要なことが書かれています。「解説」の本文(愛玩動物に関する箇所のみ)を掲載されている方がおられるので、本文はそちらにあたっていただくとして、ここでは何回かに分けて要点のみをお話ししたいと思います。

 

<指針を貫く根本的精神>

最初に「指針を貫く根本的精神」として、「動物にできる限り苦痛を与えないこと」と「動物による人への侵害を防ぐこと」の2つが挙げられています。

 

<動物を殺処分することができる場合>

動物を殺処分できる場合として、次の4つが挙げられています。

1 重篤な疾病あるいは障害によって回復の見込みがなく、かつ、著しい苦痛を伴っていて、致死以外に方法がない場合

2 動物集団の維持のためには生存数の人為的調節以外に方法がない場合

3 人の生存及び生活が脅かされ、あるいは将来脅かされると予想され、動物を致死させる以外に方法がない場合

4 その動物の利用目的が致死によって完結する場合

1は個体の福祉を守るため、2は群としての福祉を守るため(群管理は獣医学特有の考え方で、なかなか理解してもらえないのですが、簡単に言うと個体管理は1本1本の木を守る考え方で、群管理は森を守る考え方です。このことについては改めてお話ししたいと思います)、4はそもそも産業動物など、死をもって人間の用に供する動物の場合です。3はよくわからないと思いますので、総理府が例示しています。

その中には「地方自治体の動物管理施設に収容された動物において、譲渡の可能性が著しく低くなり、かつ自治体による飼養の継続が経済上等の理由で著しく困難になった、若しくはそうなるおそれのある場合」が含まれます。譲渡の可能性を殺処分の判断基準にするという考え方の根拠はここにあります。もちろんこれは総理府(環境庁)からの通知ですから、行政都合による殺処分に国がお墨付きを与えているわけです。もっとも、実験動物や産業動物が増えすぎて経済的に飼いきれないという理由も、なんだかなあと思いますが。

 

※現在は改正され「動物の殺処分方法に関する指針」となっています。「解説」は旧指針の解説ですので、「処分」は「殺処分」と読み替える必要があります。