「動物の処分方法に関する指針の解説」を読む その2 「殺処分動物」の定義

前回から引き続き、「動物の処分方法に関する指針の解説」※を読んでいきます。

 

<動物の殺処分を決定する者>

動物は動産のため、殺処分の責任と権限は基本的にその動物の所有者にあると解されますが、その判断には「生命の尊厳性」が尊重されるべきです。また「救うべからざる状態」の判断については原則として十分な獣医学的根拠が必要で、緊急事態においては行政的判断も必要です。

 

<動物の殺処分に係る者>

動物の殺処分は、その動物の所有者あるいは占有者の責任において行われるべきで、専門家に殺処分を委託するとしても、「指針」の遵守に関する総括的責任は基本的に動物の所有者にあると解されます。

 

<動物の愛護と人の利益の調和>

「指針」は動物と人の利害が相反する場合においても、動物愛護と人の利益の調和に絶えず配慮することを求めていると解されるべきです。

 

<対象動物>

「対象動物」の定義は前述のとおりです。「指針」は哺乳類と鳥類(その後爬虫類が追加されました)を対象としていますが、その他の動物の殺処分にあたり苦痛軽減に努めなくてもよいことを意味するものではありません。

 

<殺処分動物>

「対象動物」のうち、殺処分が決定された動物を「殺処分動物」といいます。たとえ死をもって人間の用に供することが前提の動物であっても、殺処分が決定するまでは「殺処分動物」ではありません。決定のタイミングは下のとおりです。

また「殺処分動物」は出生後の個体と解され、胎仔は適用外となります。

地方公共団体に収容されている動物については、このように記載されています。

 

また、地方公共団体が住民から引取りを求められた犬、猫及び狂犬病予防法によって捕獲された犬も、譲渡の可能性が残っている間は、(殺)処分動物とみなされない

 

譲渡の可能性がゼロになることは理論上あり得ませんから、字面だけを見ると殺処分は不可と読めますが、「指針」は「動物愛護と人の利益の調和に絶えず配慮する」ことを求めていて、また「譲渡の可能性が著しく低く」なった結果、飼養が困難になった場合(またはおそれがある場合)には殺処分が認められるとされています。それらを考慮し裏読みすると、収容動物が「殺処分動物」になるタイミングは「譲渡の可能性が著しく低く」なったと判断された時点であると考えるのが自然です。

では「負傷収容された犬猫」はどうなのでしょうか。負傷収容は動管法時代から存在する規定なので、記載漏れとは考えにくく、あえて記載していないと考えるのが自然です。負傷収容された犬猫は基本的に譲渡対象ではなく、獣医学的根拠から「救うべからざる状態」に陥ったとみなされた時点で「殺処分動物」になるというのが私の考え方です。

 

※「解説」中の「処分」は「殺処分」に読み替えています。