「動物の処分方法に関する指針の解説」を読む その3 「殺処分」「苦痛」の定義

前回から引き続き、「動物の処分方法に関する指針の解説」※を読んでいきます。

 

<殺処分>

殺処分とは殺処分動物を死に至らしめることです。動物の死の定義については、獣医学的判断を基本に、社会通念により決すべきとされています。また「指針」では殺処分にあたり「化学的又は物理的方法により、できる限り処分動物に苦痛を与えない方法を用いて、当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる(=安楽殺)」ことを求めています。

 

<苦痛>

「解説」は「苦痛」をこう定義しています。

 

本指針においては、痛覚刺激による肉体的(生理的)な痛みだけではなく、中枢神経の興奮等による非肉体的(精神的)苦悩、恐怖、不安、うつの状態等を総括して苦痛と呼ぶ。

 

動物に人と同等の苦痛があるか否かは議論が分かれますが、人が苦痛と感じるようなことは動物も同様に苦痛を感じるとして殺処分方法を定めることが望ましいとされています。

 

<管理者>

管理者とは、殺処分動物の保管、飼養管理、殺処分動物の保管施設や殺処分施設の管理について実質的な責任をもつ者を指します。管理者は殺処分動物を管理するのであって、殺処分が決定する前の動物の管理を行う者は管理者とは言いません。また管理者は「動物の生理、生態、習性等を理解して生命の尊厳性を尊重し、かつ、動物の苦痛とその軽減について十分な知識、技術、経験をもつ者が当たらなければならない」とされ、暗に獣医師であることが求められています。

 

<殺処分実施者>

基本的に殺処分は、その動物の所有者及び占有者の責任において実行されるべきですが、安楽殺を実施するには深い知識、高い技術、長い経験が必要で、場合によっては、動物愛護の観点からそれらのスキルをもつ者に殺処分を委託することも必要です。また現時点で殺処分実施者の資格認定制度はありませんが、将来的には教育や認定制度の整備が必要と述べられています。

管理者及び殺処分実施者の責務について、「基準」ではこう定められています。

 

管理者及び殺処分実施者は,動物を殺処分しなければならない場合にあっては,殺処分動物の生理,生態,習性等を理解し,生命の尊厳性を尊重することを理念として,その動物に苦痛を与えない方法によるよう努めるとともに,殺処分動物による人の生命,身体又は財産に対する侵害及び人の生活環境の汚損を防止するよう努めること。

※「動物の処分方法に関する指針」は、平成19年に「動物の殺処分方法に関する指針」に改正され、旧「指針」中の「処分」はすべて「殺処分」に改められました。「動物の処分方法に関する指針の解説」は旧「指針」についての解説文ですので、特に改正はされていません。ここでは改正「指針」に合わせて「処分」は「殺処分」と読み替えています。