「動物の処分方法に関する指針の解説」を読む その4 殺処分の方法①

「第3 殺処分動物の殺処分方法」は指針の最も重要な箇所で、こう書かれています。

 

殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。

 

あえてここに具体的な方法を記述しなかったのは、社会の変化や獣医学の進展によって新しい殺処分法が開発されることが予想されるため、「指針」に具体的に記述してしまうと、新しい方法に対応できないおそれがあり、別建ての「解説」に現時点における知見を記載しておく方が良いと判断したものです。すなわち十分な理由があれば、「解説」に記載されていない新しい殺処分法を適用すべきとしています。

また、同じ動物種は同じ方法で殺処分されることが望ましいとしながらも、現実問題として人の利用目的との調和も必要との観点から「愛がん動物(一般)」「愛がん動物(行政)」「展示動物」「実験動物」「産業動物」に分けて記述されています。

 

<一般原則>

原則として殺処分は「安楽死処置」であることが求められますが、実験動物や産業動物においては、その利用目的から愛がん動物や展示動物と同等の「安楽死処置」を施せない場合も考えられます(おそらくコストの問題や、薬物による食肉の汚染などが想定されているものと思われます)。その場合は「社会的に容認されている通常の方法」によることとされています。

 

<愛がん動物(一般)>

愛がん動物の「安楽死処置」は下のような基準で評価され、その方法は次の通りです。

 

〇 吸入麻酔剤(エーテル、ハロタン、メトキシフルラン、エンフルラン、イソフルラン等)

〇 炭酸ガス

〇 バルビツール系麻酔薬(ペントバルビタールナトリウムが多用される)の静脈注射

 

<愛がん動物(行政)>

行政機関に収容された犬猫においても愛がん動物(一般)の方法によることが望ましいとされていますが、大量の犬猫を殺処分するため、炭酸ガスの使用が一般的と記されています。そこには「ある地方公共団体の例」として、炭酸ガスによる殺処分の方法や留意事項についてかなり細かく書かれています。留意事項については炭酸ガス作用濃度の問題や個体差などについて述べられていますが、これらについては以前私がまとめていますので、ここでは割愛します。

 

※「解説」中の「処分」は「殺処分」に読み替えています。