離乳前の子猫を見つけたら

殺処分される猫の多くが、離乳前の子猫です。しかもその多くは善良な市民の残念な判断によって、母猫から引き離されて持ち込まれます。離乳前の子猫が持ち込まれた場合、ウチの自治体は、衰弱や感染症がない限り育てる努力をしますが、どうしても離乳までに一定数の脱落者が発生します。原因不明の「進行性衰弱症候群」で全滅することもあります。おそらく、母親から十分な移行免疫をもらっていないことが原因と考えられます。やはり母親に勝る養育者はいないのです。それを踏まえ、離乳前の子猫が持ち込まれた場合、即日殺処分する自治体もあります。それは「ケアを続けても死んでしまう可能性が高い中、いたずらに生かし続けることは動物福祉に反する」という考え方に基づいていて、環境省も容認しています。

野鳥のヒナのように「子猫を拾わないで」というキャンペーンを打てばいいのではないかという意見もあるでしょう。しかし野良猫の子猫を野に置いたまま助けることは、結果的に野良猫を増やすことにつながるというジレンマがあります。野良猫を増やさないという観点からは、子猫を積極的に引き取り、場合によっては殺処分するというのが理にかなっているのかもしれません。しかしそれは確実に、自治体職員の身体的・精神的負担を増大させます。特に離乳前の子猫の殺処分については、愛護者からの批判が非常に多いです。

現実問題として、市民から「離乳前の子猫が置き去りにされている」という相談を受けた場合、若干後ろめたさを感じながら「そのままにしてください」と言わざるを得ません。たいていの人は猫の習性についてほとんどご存じではないので、放置することをためらいますが、私は母猫から引き離すほうが子猫の生存率を低下させる(殺処分の可能性も含め)ことを告げたうえで、下のように説明します。

もし子猫に異常が疑われたら、自分で保護せずに行政機関に「負傷収容」を要請しましょう(自分で離乳までケアができる人は別です)。子猫の厳密な健康評価は難しいですが、健康な子猫のおなかはふっくらしていて、ピンク色です。「体が濡れている」「体が汚れている」「体が冷えている」「痩せている」場合は保護が必要です。このサイトの写真が役立ちます。子猫にとって最も危険なのは「寒さ(濡れ)」と「自動車」です。野良犬や場合によっては人間も脅威になります。子猫は飢餓よりも、低体温症や事故で命を落とします。

しかし野良猫の子を野に置くことを容認することは、野良猫を減らすという目標と矛盾することは事実です。各自治体に離乳前の子猫のケアに対応できる人員の整備(またはミルクボランティアの設置)を法律で義務付けて、子猫を積極的に引取らせるくらいのことをしないと、猫の殺処分はなかなかなくならないと私は思います。