野良犬や野良猫は「駆除」できるか

犬や猫は動愛法の「保護動物」ですが、ノイヌやノネコは鳥獣保護法の「狩猟動物」です。これを拡大解釈して、野良犬や野良猫は「駆除」してもよいという人がいますが、旧狩猟法の「ノイヌ」「ノネコ」について、林野庁(当時)の見解は以下のとおりです。

 

「ノイヌ」とは山野に常棲する「いぬ」を謂い、市街地又は村落に棲息する無主の犬、所謂野良犬はこの範疇に入らないものと解する。(昭和25年12月25日付25林野第16999号)

 

1 「ノネコ」とは、常時山野にて、野生の鳥獣等を捕食し、生息している「ネコ」をいう。

2  (1)(2)略

(3) 飼い主の支配をはなれた「ネコ」で1に述べた要件を満たすものは「ノネコ」に該当するが、飼い主のもとをはなれ市街地または村落をはいかいしているような「ネコ」は規則第1条にいう「ノネコ」ではない。(以下略)(昭和39年8月31日付39林野造第716号)

 

つまり、野良犬や野良猫は「保護動物」であり、狩猟対象にはならないということです。

ではわが国で「ノイヌ」や「ノネコ」はどれくらい捕獲されているのでしょうか。狩猟動物の捕獲にはさまざまな法的根拠があり、環境省が公表する狩猟統計にはそれが羅列されていて非常に見にくいのですが、ここでは純粋に狩猟者によって捕獲された頭数を見てみましょう。

平成19年~28年の10年間で、狩猟者によって捕獲された「ノイヌ」は395頭、「ノネコ」は988頭で、それぞれ159頭、446頭が銃撃によります(その他は「網」や「わな」による捕獲です)。なお、この中には東京都や鹿児島県などで行われている、生態系保護を目的とした「ノイヌ」や「ノネコ」の駆除は含まれていません。これが多いか少ないかは皆さんの判断にお任せしますが、日本に「ノイヌ」「ノネコ」とみなされる動物が存在することは事実です。そして彼らは元々日本に生息していた野生動物ではなく、人間に飼われていたものが野生化したという事実も、心に留めておく必要があります。

動物福祉「先進国」といわれるドイツにおいては、野良犬や野良猫も狩猟対象になっています。またドイツ人は「動物をわなにかかった状態で放置するのは非人道的」との考え方から、銃撃を好みます。野良犬や野良猫を野に置き、過酷な生涯を送らせるくらいなら、一思いに銃殺したほうがよいという考え方です。感情に基づく「動物愛護」思想の日本人には理解しがたい考え方かもしれませんが、「動物福祉」はあくまでも理論的・科学的です。それも彼らなりの優しさなのです。