飼い主への返還

所有者不明として持ち込まれた犬猫を、本来の飼い主に返還することは動物管理機関の重要な仕事です。実際にどれくらいの犬猫が返還されているか、環境省の「動物愛護管理行政事務提要」から平成30年度の数字を見てみましょう。

成犬は半数近くが返還されています。犬には登録制度があるため、たとえ狂犬病予防法で義務付けられている「鑑札」「注射済票」が装着されていないとしても、発見場所や犬種などで飼い主を絞り込むことも可能です。子犬や子猫はほとんど返還されていませんが、所有者不明として持ち込まれる子犬や子猫は野良犬や野良猫の子である可能性が高く、そもそも飼い主がいないものと考えられます。

成猫の返還率の低さは、まさに猫の飼育に係る問題点を露見しています。多数の猫を外飼いしている、特に年配者の中には、自分が飼育している猫の個体管理が不十分な方もおられます。また、野良猫に餌付けをする形でゆるく「飼って」いる人もいます。こういう人たちは、たとえ自分が飼っている猫がいなくなったとしても「そのうち帰ってくる」とたかをくくり、その間に「所有者不明」として動物管理機関に持ち込まれ、良くて第三者に譲渡、最悪の場合殺処分ということになります。また猫の多頭飼育を快く思わない近所の人が、駆除目的であえて猫を捕獲し、所有者不明として動物管理機関に持ち込むといったケースも珍しくありません。今どきは、各自治体は収容された動物の情報について、インターネットで積極的に発信していますが、年配者の中はそういうものを目にしない方もおられるのです。

こういう悲劇を防ぐために猫の飼い主がすべきことは、完全室内飼育と個体識別措置です。私がいたセンターから猫を譲渡する際には、この2点をとにかくしつこくお願いしました。完全屋内飼育は猫を飼う際の基本です。「家に閉じ込めてかわいそう」と思われるかもしれませんが、交通事故や虐待、感染症のリスクにさらす方がよほどかわいそうですし、猫は屋内でも十分に楽しむことができる動物です。キャットタワー等、上下の移動ができるような環境を整えてあげて、かつ飼い主がよく遊んであげれば、猫は幸せな生涯を送ることができます(さらに猫を幸せにする「エンリッチメント」については別の機会にします)。

時折「完全室内飼育だから個体識別措置は必要ない」と言われる方もおられますが、猫が何かの拍子で屋外に出てしまうという「事故」は、えてして発生するものです。完全室内飼育であっても、首輪と迷子札は装着すべきです。マイクロチップを装着していたとしても、全国民が読み取り機を持っているわけではありません。迷子札が付いていれば、返還の可能性はぐっと高まります。返還率を高めることは、譲渡率の向上と同じくらい重要で、結果的に殺処分を減らすことにもつながります。