マイクロチップの注意点

かつて米国では「マイクロチップによって、ペットがGPSで管理される」という都市伝説がありましたが、マイクロチップ(MC)は電波を発しない(無電源ですから)ので、そんなことはありません。また「MCはその周辺の癌を誘発する」という都市伝説(?)もありますが、癌とMCとの因果関係が不明な症例が多く、またMCによる癌の発生を疑う症例は、MCの普及率から考えると無視できるくらい少ない数です。癌の発生の懸念よりも、MC装着のメリットはそれを大きく上回ります。

米国のMCは3種類の規格があり、それぞれ専用のリーダーが必要です。またすべての規格に対応する「マルチリーダー」もありますが、精度が低いのが欠点です。日本や欧州など、米国以外の国々のMCはISO規格で統一されているため、そのような問題はありません。むしろ問題は、MCの扱い方にあります。

基本的にMCは首の後ろか肩に装着されますが、長い間に体内で移動する可能性があります。一般的に用いられているハンディ型のリーダーでは、本来あるべき場所にMCがないことで、MCの存在を見落とす可能性があります。本当は体全体をスキャンすることができるボックス型のリーダーが望ましいのですが、大型で高価なためあまり普及していません。

また大型や太っている動物ではスキャンの精度が下がるといわれています。また金属製の首輪やタグもスキャンの精度を下げるといわれています。本当はあってはならないことですが、MCの装着ミスもまれにあります。装着したつもりが、針先が外に抜けていてMCが外に落ちていたとか、皮下ではなく表皮の下に埋め込んでしまったとか、私もそういう失敗をしたことがあります。動物管理機関におけるMC装着の際には、少なくとも装着前(既存のMCがあるとお互いに干渉するので良くないといわれています)、装着後、譲渡時の3回のスキャンが必要です。

そして意外に多いのが、飼い主情報の登録漏れです。せっかくMCが装着されていても、情報が登録されていなければまったく役に立ちません。

めったにないですが、MCも電子機器ですから故障の可能性があります。また上記のように装着ミスや場合によってはスキャン精度が低くなることもあります。すべての人がMCリーダーを持っているとは限りません。MCを装着しているからといって安心せず、迷子札等を併用することが必要です。

「かわいそうだから」といってMC装着をためらう飼い主の方もおられますが、迷子になって動物管理機関に収容され、殺処分される方がかわいそうです。装着は一瞬の痛みで終わります(よく「MC装着は痛くない」といわれますが、結構痛がります)。