「アニマルポリス」について考える<1> 「アニマルポリス」とは何か

日本は法治国家であり、動愛法に違反する行為は違法で犯罪です。動愛法には、違反者(法人を含む)に対する罰則規定が設けられています。愛護動物のみだりな殺傷や虐待(ネグレクトを含む)、遺棄、特定動物※の違法飼養などに対しては、懲役刑もあり得ます。罰金刑だけですが、動物取扱業者に対する罰則規定もあります。

しかし残念ながら、それらの罰則規定はほとんど行使されないまま、動物たちの苦しみは放置され続けられています。本連載においては、数回にわたってその原因について考察するとともに、もし「アニマルポリス」が実現可能なのであれば、どのような形が望ましいかについて考えていきたいと思います。ここで「アニマルポリス」という言葉を使いましたが、本連載においては「動愛法違反を取り締まるための専従組織」を「アニマルポリス」と呼ぶことにします。

現時点において動愛法違反を取り締まっている部署は、動物愛護管理センターや保健所といった、いわゆる知事部局(警察本部や教育委員会と区別するためにこう呼びます)です。よほどの場合であれば警察も動きますが、告発が必要(後述)で、あてにはなりません。なぜなら、警察には動物関連の知識やスキルがないからです。

知事部局の職員(主に獣医師)の中から「動物愛護管理担当職員」(都道府県は動愛法第37条の3第1項の規定にて必置)が任命され、動愛法に関する事務を行います。ここで重要なのは、「動物愛護管理担当職員」は必置ではあるが専従の必要はないということです。動愛法の令和元年改正により、都道府県においては「動物愛護管理担当職員」が必置となりましたが、その実態は既存の職員に兼務を発令するだけです。決して新たに職員を配置するわけではありません。動物愛護管理センター職員はもちろん、場合によっては飲食店や食品工場などを監視する「食品衛生監視員」や、公衆浴場や旅館などを監視する「環境衛生監視員」などに兼務を発令してそれでおしまいです。増員等、現場の負担増に対するフォローなどありません。しかも直接人間の健康にかかわる仕事ではないので、ついつい片手間になります。そんな体制で動愛法違反の取り締まりが効果的に実施できるわけがありません。

「動物愛護管理担当職員」が担当する業務についてまとめておきます。同時にそれは「アニマルポリス」が担当すべき業務でもあります。これは片手間でできる仕事ではありませんし、してはなりません。専従の組織を創設すべきです。

※特定動物…猛獣や猛禽、毒ヘビなど「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物として政令で定める動物」およびそれらの1代雑種(動愛法第25条の2)をいう。動愛法の令和元年改正により、愛玩目的での飼養は禁止となった。