「アニマルポリス」について考える<6> 「アニマルポリス」が必要な理由

ここまで動愛法違反の罰則規定について見てきましたが、殺傷・虐待(ネグレクトを含む)・遺棄といった、自然犯(いつの時代、どの社会においても当然の悪であると考えられる犯罪)の意味合いが強いものは別格として、動愛法違反はその多くが法定犯(または行政犯:法規に違反する犯罪)であり、しかもその罰則は行為そのものではなく、行政処分に対する違反に係ります。言い方を替えると、行政指導にさえ従えば、すでに犯した違反を罪には問わないということです。

例えば、第一種動物取扱業者が順守義務のある「第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目 (平成18年1月20日環境省告示第20号)」に違反する行為を行っていたとしても、そのこと自体に罰則はなく、知事等による改善勧告履行命令に違反してはじめて、罰則が適用される(=告発が可能)ことになります。しかも最初から行政指導に従っていれば、すでに犯した違反については不問となります。

「細目」に違反しているということは、当然虐待やネグレクトに該当する可能性もあるわけですが、そこはあくまでも「細目」の違反ということで、登録取消をちらつかせながら、行政指導により改善させるというスタンスです。とにかく日本の行政は経済活動に甘いのです。しかも行政担当者の人員不足は深刻で、動物取扱業への立入検査などほとんど行われません。これでは行政指導すらできません。

自然犯(少なくとも私はそう思っています)である殺傷・虐待(ネグレクトを含む)・遺棄についても、立件されるのは猟奇的でニュース性の高いケースや、SNSで拡散されたり大規模であったりなど社会的影響の大きいケースに限られます。しかもよほどのことがない限り、懲役刑ましてや実刑をくらうことはありません。また個人的にひっそりと行われている虐待行為が摘発されることなど、ほとんどありません。令和元年改正で、虐待疑いのある動物を業務上発見した獣医師に対する通報義務規定(41条の2)が設けられましたが、機能しているとは言い難いのが現実です。なぜなら日本の獣医学教育では法獣医学などほとんど学びませんし、たとえ発見したとしても通報窓口が不明瞭だからです。

いくら立派な罰則規定があっても、実効性がなければ絵に描いた餅です。実際に違反者にその罰則を与えないと、抑止力として機能しません。現状において、動愛法違反の取締まりはきわめて甘いと言わざるを得ません。動愛法違反の摘発を行うために、法獣医学の知識を持った獣医師による専従組織である「アニマルポリス」を設置する必要性はそこにあります。しかもそれは都道府県及び政令指定都市に設置する必要があります。その理由については次回お話しします。