もし「アニマルポリス」を創設するとして、その組織をどこに所属させるかという問題があります。一般的にはおそらくここに挙げた3つが思いつくのではないでしょうか。
1番目は環境省地方環境事務所に、特別司法警察職員としての「動物取締官」を置くという案、2番目は警察本部に「いきもの係」を創設する案、3番目は「動物愛護管理担当職員」を特別司法警察職員とする案です。
しかしもう結論は出ています。「動物愛護管理担当職員」を特別司法警察職員とする案の一択です。前回までに説明したように、動愛法違反の取締りは「行政指導」をベースにしています。違反者が改善に応じない場合にのみ、改善に応じない行為に罰則が与えられます。しかも罰則を与えるためには、警察に告発し、そのうえ検察による起訴が必要です。行政の仕組みをご存じの方なら理解していただけると思いますが、告発へのハードルは非常に高いです。警察が受理してくれるとも限りません。業者は動愛法に違反したからといって、刑事罰を受けることなどないとたかをくくっています。担当職員が警察権を持ち、直接検察に送致することができれば、処理期間の短縮につながるだけではなく、起訴へのハードルがかなり下がります。そして何よりも「行政指導に従わなければ起訴される」というプレッシャーが違います。行政指導に従わない悪徳業者であっても、労働基準監督官を恐れ従います。そこに警察権があるからです。
またこの仕組みは、一般市民による虐待等(殺傷・虐待(ネグレクトを含む)・遺棄)の事案についても威力を発揮します。動物虐待等疑いを警察に通報しても、警察は一応現場を確認して「虐待を現認できず」で終わります。警察には動物についての知識がないので、あまり深入りしようとしません。動愛法担当部局に通報しても、虐待者等に行政指導して終わりです。担当職員は警察権を持たないため、あくまでも「行政調査」に基づく「行政指導」しかできないのです。所有権を盾にされると、被害動物のレスキューすらできません。行政指導に従わないことをもって警察に告発することは可能ですが、あまりにもスピード感に欠けます。虐待等を現認した時点で警察に告発することも理論的には可能ですが、結局捜査するのは警察ですから、あてにはなりません。担当職員が警察権を持っていれば、虐待等の事実が確認された時点で「行政調査」から「捜査」に切り替え、証拠が固まれば送検できます。場合によっては逮捕も可能です。虐待等はその行為自体が犯罪ですから、やめればそれでいいというものではありません。適切に処罰することが抑止力にもつながります。また警察権があれば捜索差押が可能となり、被害動物のレスキューもスムーズに行えます。