動物愛護法違反を取り締まるためには、どれだけの数の職員が必要かを考えてみます。例えば、第一種動物取扱業の監視指導のみを考えてみます。第一種動物取扱業は全国に44828件あります(H31.4.1現在、以下同じ)。本当のところ、月1回は監視したいところですが、現実的なところで年2回、ただしペットショップやブリーダーなどの販売業(21069件)に関しては、2か月に1回(年6回監視)するとします。1日に監視することができる施設数を7施設、公務員の年間出勤日数を250日とすると、
(21069×6 + 23759×2)÷250÷7≒100
つまり、全国で100人の職員が必要となります。実際には施設監視を1名で行うことはありませんので、正確には「100組」です。言い換えると、1組が担当する施設数は
44828÷100=448.28 です。
これを各都道府県市が管轄する動物取扱業者数に当てはめると、必要な職員数が算出されます。
1組(2名)で対応可能な府県がある一方、東京都は11組(22名)の専従職員が必要です。しかもその中には第二種動物取扱業者や特定動物飼育者への監視件数は含まれていませんし、虐待や多頭飼育崩壊への対応も含まれていません。ですので、本当にざっくりとした数字なのですが、本気でやろうとすれば、これだけの人員が必要だというイメージはつかめると思います。
ですので、本当は「アニマルポリス」云々よりも、担当職員の増員がまず必要なのです。しかしこのご時世、基本的に公務員の増員はあり得ません。しかし法的に義務付けられれば、話は別です。個人的意見としては、行政指導から告発、起訴に至る道のりが機能する仕組みを整備し、かつ警察の協力体制が得られるのであれば、必ずしも組織の新設にはこだわりません。しかし現状では増員が望み薄である以上、専従組織としての「アニマルポリス」の設置を法的に義務付け、同時に増員を果たすという流れでなければ、動愛法違反の取締り体制の強化は図れないと考えています。既存の「動物愛護担当職員」に警察権だけを付与して「後はヨロシク」では困るのです。
では担当職員を増員するとして、獣医師が集まるのかという疑問をお持ちの方もおられるでしょう。獣医師にとって公務員は不人気職種です。しかし全国で数百人の獣医師を新たに雇用することは難しくないと私は思います。「アニマルポリス」という、獣医学的スキルを用いて動物を助ける仕事は若い獣医師たちにとって魅力的でしょうし、下手をすると公衆衛生分野が獣医師にとって人気の職場になる可能性を秘めていると私は思います。