動愛法第38条で、知事等は「動物愛護推進員(推進員)」を委嘱するよう努めるとされています。令和元年改正で「委嘱することができる」から「委嘱するよう努める」に変わりました。推進員の活動については、このように定められています。
その中に「犬、猫等の動物の愛護と適正な飼養の推進のために国又は都道府県等が行う施策に必要な協力をすること」という条項があります。そこで「動物愛護管理担当職員」による動愛法違反の取締りの補助として推進員を活用できないかと考えましたが、以下の理由でそれは難しいようです。
(1) 推進員制度の目的は「行政も含めた動物の愛護と適正な飼養に関する有識者等のネットワークが地域レベルで作られていくことに制度的に寄与(平成12年11月10日総管第505号「動物の保護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(動物の愛護及び管理に関する法律)の施行について」)」することにあります。
(2) 推進員の主な役割は「動物愛護思想の涵養」であり「適正飼養の推進」です。これらは、いま目の前で苦しんでいる動物を救うことには何ら役立ちませんが、将来苦しむであろう動物を減らすことには役立ちます。それも誰かがやらねばならない仕事です。そして行政の手が回らない分野でもあります。それを推進員に担ってもらうことは、担当職員の負担軽減にも役立ちます。
(3) 推進員はボランティアですので、業者への立ち入りや虐待調査といった「きわどい」業務を任せることは困難です。逆に推進員にそれだけの権限を与えてしまうと、それはそれで問題があります。
しかし権限がなくても動愛法に関する知識があれば、ペットショップや動物園などの一般公開されている部分に利用者として立ち入り、不適切な点を発見することは可能ですし、チラシや広告の表示義務違反を見つけることも可能です。近所で飼われている動物の様子をそれとなく伺うことも、場合によっては可能でしょう。動物虐待疑いが近所のうわさになっていることもあるでしょう。こうして一般人として可能な範囲で「疑い」を探知し、担当者に通報するだけでもずいぶん違うと思います。
また推進員は獣医師(特に開業獣医師)が多いのですが、不審死の動物死体を適切に保管して担当者に通報することも、獣医師であればできるでしょう。そういう形で積極的に推進員を活用することは可能かと思います。