アニマルポリスについて考える<10> 今できること

9回にわたって「アニマルポリス」について考えてきましたが、警察権を持つ動愛法取締りのための専従組織としての「アニマルポリス」の設置には法改正が必要です。そこは立法府(=国会)の仕事ですから、我々一般公務員はその成り行きを見守るほかないのですが、もし法改正が実現しないとして、現実的にどのような対応が可能なのでしょうか。

私が声を大にして言いたいのは、動物愛護管理担当職員の増員です。どんなに立派な法規制を設けたとしても、取り締まる職員が足りなければ話になりません。そして専任化です。都道府県等の動物愛護管理担当職員のほとんどは動物愛護管理センターや保健所に所属し、他の業務を担当しながら動愛法関連事務を行っています。私が所属する自治体では、保健所に配属されている、食品衛生監視員(飲食店や食品工場などを監視指導する職員)である獣医師に、動物愛護管理担当職員を兼務させています。もちろん狂犬病予防員も兼務していますし、と畜検査員や食鳥検査員を兼務している場合もあります。

警察が非協力的なのも問題です。前述のとおり、警察への告発はハードルが高いため、行政が動愛法違反を探知した場合、通常は告発ではなく警察に通報することになります。告発を受理してしまえば捜査の義務がありますが、通報をどう扱うかは警察の裁量です。某県警では、記録も残さず放置という事例もあったようです。また、明らかに遺棄が疑われる事案であるにもかかわらず、捜査もせずに「所有者不明」として子猫を動物愛護管理センターに持ち込む警察官も存在します(何度も書きますが、これは実話です)。これらは警察の職務怠慢と表現することもできますが、動物関連の事案は優先順位が低く、しかも「よくわからないから関わりたくない」というのが本音なのだと思います。

動愛法違反の通報窓口がよくわからないのも困ったものです。私は負傷動物の保護依頼なども含めた、動物関連のワンストップサービス窓口を各都道府県に設けるべきだと思っています。できれば年中無休・24時間対応が望ましいです。業務妨害まがいの、行政に対する苦情電話の標的になるおそれがありますが、毅然とした対応が必要です。

殺傷や虐待の立件には獣医学的な鑑定が必要ですが、日本の獣医師はいわゆる「法獣医学」についてほとんど教育を受けていませんし、研究者もごくわずかです。研究者レベルにおいて、全国の獣医大学に法獣医学講座を置き、自治体や警察の相談に応じる体制を構築しようという動きがありますが、まだ始まったばかりです。

繰り返しますが、動愛法に関しては取締り人員が法規制にまったく追い付いていません。法規制の実効性を担保するには、まず担当者の増員が必要であると再度指摘し、この連載をいったん終えたいと思います。