自治体による、所有者不明の猫の引取りを原則拒否できる規定が、令和2年6月1日から施行されました。幼齢や負傷は別として、自活可能な所有者不明の猫を「保護」し、自治体に持ち込もうとしても、「元の場所に戻すように」と言われます。しかし戻す場所によっては、「遺棄」に問われる可能性があるので注意が必要です。
遺棄については、「動物の愛護及び管理に関する法律第 44 条第3項に基づく愛護動物の遺棄の考え方について(平成 26 年 12 月 12 日付け環自総発第 1412121 号)」において、「同条第4項各号に掲げる愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に離隔することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険にさらす行為」と定義されています。そして遺棄か否かの判断については、「離隔された場所の状況、動物の状態、目的等の諸要素から総合的に勘案する」必要があるとしています。
※「離隔」とは「はなれへだたること。また、遠く隔たるように引き離すこと」で、隔離と同義とされています。
離隔された場所の状況 「飼養されている愛護動物」については、離隔された場所の状況に関わらず虐待と判断します。「人間の保護を受けずに生存できる愛護動物(野良犬、野良猫、飼養されている野生生物種等)」については、「生命・身体に対する危険に直面するおそれがある」場所に離隔された場合に、遺棄と判断されます。具体的には
・ 生存に必要な餌や水を得ることが難しい場合
・ 厳しい気象(寒暖、風雨等)にさらされるおそれがある場合
・ 事故(交通事故、転落事故等)に遭うおそれがある場合
・ 野生生物に捕食されるおそれがある場合 等
が考えられます。また、たとえ第三者による保護が期待される場所(動物病院や動物カフェの前など)に離隔された場合であっても、そこが「生命・身体に対する危険に直面するおそれがある」場所であれば、遺棄です。
動物の状態 「生命・身体に対する危険を回避できない又は回避する能力が低いと考えられる状態の愛護動物(自由に行動できない状態にある愛護動物、老齢や幼齢の愛護動物、障害や疾病がある愛護動物等)」については、離隔された場所の状況に関わらず虐待と判断します。野良犬や野良猫であっても、このような状態であれば遺棄となります。(次回に続く)