目的 「法令に基づいた業務又は正当な業務として、以下のような目的で愛護動物を生息適地に放つ行為」は、遺棄に該当しないとされます。具体的には
・法第 36 条第 2 項の規定に基づいて収容した負傷動物等を治療後に放つこと
・治療した傷病鳥獣を野生復帰のために放つこと
・養殖したキジ・ヤマドリ等を放鳥すること
・保護増殖のために希少野生生物を放つこと 等
とされています。興味深いのは、「負傷動物等を治療後に放つ」ことは遺棄ではないという箇所です。動愛法第36条第2項で規定される「犬猫等の動物」は「愛護動物のうち、都道府県知事等が選定した動物(平成18 年環境省告示第26 号「犬及び猫の引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」)を指しますから、負傷収容した野良猫の治療後に元の場所に放つ行為は認められているということになります。また「TNRは遺棄ではないのか」という指摘がありますが、TNR(=地域猫)は国の施策ですから、「正当な業務」として認められているわけです。
話を最初に戻しますが、自活可能な所有者不明の猫の引取りを自治体に求めると、「元の場所に戻すように」と言われますが、本当はおかしいのです。なぜなら、その猫が本当に野良猫なのか、飼われている猫なのかどうかの確認は困難だからです。飼われている猫であれば、どこに放そうがそれは遺棄になります。ですので、そもそも自活可能な所有者不明の猫を「保護」してはいけないのです。そういう猫は野に置けというのが動愛法の規定です。
自活不能な、例えば幼齢や病気の猫の場合はいったん保護してしまうと、元の場所に戻すだけで遺棄に該当します。野外でそういう猫を見つけた場合、自分で面倒を見ることができる人であれば保護していただいてもよいかと思いますが、自分で面倒を見られないという人は、一時の感情で手を出すべきではありません。「子猫を保護したが、自分では飼えない」という相談があまりにも多いのです。しかもその多くは猫の習性を知らないことによる「誘拐保護」です。特に幼齢の子猫を見つけた場合、手を出す前に必ず行政機関に相談してください(行政機関に委ねると殺処分の可能性があるため、それを懸念されるのであれば、動物愛護団体等に相談されてもよいかと思います)。緊急を要する場合に、危険のない場所に移動させることは問題ないかと思います。
子猫が段ボール箱に入れて放置されているような、明らかに遺棄が疑われる場合は、現場を保全した上で、動愛法違反疑いで警察に通報してください。
※飼い主のわからない犬については、いかなる場合であっても保健所に相談してください。