アニマルシェルターは設置主体によって分類することが可能です。つまり公営か民営かということですが、強いて言えば、欧州は民間主体、米国は公民混在、日本は公営主体です。特に欧州の方は、日本が動物愛護管理サービスの大半を行政が担っている(つまり公金が支出されている)ことに大変驚かれ、逆に称賛されるそうです。この分類そのものに大きな意味はありませんが、アニマルシェルターを語るにあたって避けて通れない「安楽殺への姿勢」に関わってきます。アニマルシェルターは安楽殺への姿勢によって「SELECTIVE-ADMISSION(NO-KILL)SHELTER」「OPEN-ADMISSION SHELTER」の2種に分類されます。長いので、以下それぞれ「SAS」「OAS」と略します。
SASは「選択入場」のシェルター、すなわち受け入れる動物を選別するシェルターで、定員がいっぱいの場合や、譲渡が難しい動物については受け入れを拒否します。その代わり、定員が順守されほぼ全ての動物が譲渡されるため、安楽殺を行う必要がなく、別名「ノーキル」シェルターとも呼ばれます(「ノーキル」であっても、獣医療としての安楽殺は当然行われます)。欧州の多くのシェルターや米国の一部の民営シェルター(都会の大規模シェルターが多い)がこれに該当します。SASの一形態として、譲渡適性のない動物を一生飼い続ける「サンクチュアリ」と呼ばれるシェルターもあります。
OASは「自由入場」のシェルター、すなわち求めに応じて全ての動物を受け入れるシェルターです。SASで引き取りを拒否された動物も、最終的にはここに来ます。米国の公営シェルターや一部の民営シェルター、日本の公営シェルターはこれに該当します。詳細については本編でお話ししますが、シェルターには適正な収容数があり、これを超えて収容してしまうと、逆に動物福祉が損なわれるおそれがあります。そのため、やむなく譲渡が難しい動物の安楽殺が行われます。SASは安楽殺をOASに押し付けているばかりでなく、あろうことか安楽殺を行うOASを非難しています。しかし「動物を殺す場所」というアニマルシェルターのイメージを改善したのは、ほかならぬSASであることも事実です。
日本の民営シェルターは「慈悲園」の時代から、行政による殺処分へのアンチが基本理念であり、根本的に「ノーキル」です。すなわちSASであることが建前なのですが、殺処分回避にこだわるばかりに、公営シェルターから無理に動物を受け入れてしまい、結果として多頭飼育崩壊や職員のストレスによる虐待などの問題も起こっています。
シェルターとまではいえませんが、自宅で保護動物を受け入れるボランティアを「預かりボランティア(英語ではfoster=里親)」、その連合体を「レスキューグループ」と呼びます。日本の草の根活動の多くがこの形態です。