アニマルシェルターの基本1 シェルターの事業

かつてアニマルシェルターは、野良犬や野良猫を収容し、ごく一部を譲渡し、大部分を殺処分する施設でした。現代ではシェルターの役割も変化し、収容された動物を極力返還や譲渡によって、生きたままシェルターから出すことを目標にしています。

日本では動愛法の令和元年改正により、動物愛護管理センターが行うべき業務について定められました(第37条の2第2項)。つまり、公営アニマルシェルターの業務について、法で定められたのです。

もちろん、必ずしも各自治体に「動物愛護管理センター」の設置を義務づけるものではなく、どこかにこういう業務を行う部署を設けろという趣旨です。必ずしも、すべての都道府県や政令市・中核市に動物愛護管理センターが設置されているわけではありません。動物愛護管理センターは多数の動物を収容するため、一種の「迷惑施設」とみなされ、どうしても山奥に設置されがちですが、比較的都市部に設置されていて、アクセスが容易な保健所に機能を分散した方が譲渡希望者にとって利便性が高いという考え方もあるのです。

 

一から三は、動愛法関連事務です。狂犬病予防法や感染症法関連事務については、日本では環境省ではなく厚労省の管轄で、地方自治体においては保健所が担当していますが、米国では公営のシェルターが担当することも珍しくありません。

 

犬及び猫の引取り、譲渡し等」には様々な業務が含まれます。

・犬猫の飼い主からの引取り

・所有者不明の犬猫の引取り

・負傷動物の応急処置

・収容動物の適切な飼養管理

・迷子の犬猫の飼い主への返還

・犬猫の譲渡

・犬猫の安楽殺

 

「動物の愛護及び管理に関する広報その他の啓発活動」も、アニマルシェルターの重要な業務です。啓発活動は今現在苦しんでいる動物を救うことには直接役立たないため、無駄な事業であるとの指摘もありますが(私もそのような苦情を受けたことがあります)、将来発生するであろう問題を防ぐことには役立ちます。特に所有者明示(マイクロチップの普及を含む)や避妊去勢手術の推進、遺棄の防止などの飼い主教育は、迷子動物を減少させ、結果的にシェルターに入る動物を減らすことに役立ちます。しかし直接目に見える効果が現れるわけではありませんから、評価が難しい事業です。