アニマルシェルターの基本2 シェルターの統計

アニマルシェルターは、何らかの理由で動物が入ってきて、何らかのきっかけで出ていく(死亡も含む)施設です。シェルターへの動物の出入りを簡単にまとめたのがこの図です。

シェルターの目標は、収容された動物を極力返還や譲渡によって、生きたままシェルターから出すことです。米国ではシェルターの「成功」を評価するための指標として、ライブリリース率(live release rate:LRR)がよく用いられます。収容数や処分数(何らかの「結果」によりシェルターを出た動物の数)のうち、譲渡や返還などによって「生きたまま」シェルターから出た動物の割合です。しかしLRRは同じシェルターの年次評価には役立ちますが、異なるシェルター間で比較することは困難で、またそれをしてしまうと、困った問題が生じます。例えば、収容される動物の出自(迷子の飼い犬が多いか、野犬が多いか、猫が多いか)や住民の特性(一般的に、都市部の方が譲渡率が高い)など、地域によって事情が異なるからです。またLRRが低いことが、必ずしもそのシェルターの努力不足を示しているわけではありません。

LRRを「譲渡率」と「返還率」に細分類することもよくあります。譲渡率は地域社会の受け入れ能力に依存するため、米国においては管轄地区の人口当たりの譲渡数でシェルター間の比較をしたりもしますが、やはり譲渡率もLRRと同様、シェルター間の比較に用いることには問題が残ります。地域のシェルター全ての統計を用いてLRRや譲渡率を計算することは、地域の目標設定や進捗状況の確認に役立ちます

一般的に譲渡の促進に影響を与える要因としては、年齢、大きさ、気質、品種、避妊去勢の状態、外観(例えば、被毛の色)、および活動性などがあげられます。しかしそれらの要因が譲渡につながるかどうかは、地域特性や地域住民の属性(年収など)などによって異なります。したがって、シェルターごとに分析が必要です。

返還率についてはここで説明していますので詳細については述べませんが、成犬の返還率は高いものの、子犬や猫の返還率が極めて低いのは日米共通です。

殺処分数(率)も、シェルター事業を評価するひとつの指標ですが、この数値もシェルター間で比較することにさほど意味はありません。日本の自治体はこの数値を「ゼロ」にすることに躍起になり、その数値に一喜一憂していますが、なんだかなあという感じです。

日本の公営施設については、これらの数値が自治体ごとに環境省によって取りまとめられ、「動物愛護管理行政事務提要」という形で環境省のホームページにも掲載されています。またこのページでは、全国の総計ではありますが、LRRや殺処分率の年次推移のグラフを見ることができます。