アニマルシェルターにおける群管理は、感染症の予防に重きを置きます。感染症を予防するためには動物の健康管理も必要ですが、施設及び従事者の衛生管理も重要です。衛生管理の原則は清掃と消毒、そして個人衛生です。
清掃と消毒は、有機物の除去→洗浄→消毒という3段階の流れとして実施されます。清掃と消毒の要点は次のとおりです。
汚染を広げない
清掃用具や作業者の着衣、手袋などを各部屋で共有しない。
清掃・消毒の順序
幼齢動物→健康な譲渡対象動物→一時収容中の動物→不健康な動物の順で行う。
動物のストレスを最小限に抑える
騒音や動物の移動を最小限に抑え、また決まった時刻に清掃を行う 。猫はスポットクリーニング※を推奨。
清掃・消毒の頻度
動物がいるエリアは毎日、その他のエリアは適宜清掃する。
ケージ・犬舎の清掃・消毒
清掃のため動物を外に出す場合は、同じケージを使いまわさない。同じケージを用いる場合は、その都度洗浄消毒する。
食器やおもちゃの洗浄消毒
食器洗い機が理想だが、 手洗いの場合は3段階を遵守。
トイレの洗浄消毒
食器やおもちゃとは別の場所で、または最後に洗浄消毒する。
布類
洗濯後は完全に乾かす。真菌やパルボウイルスで汚染された布類は廃棄。
また、個人衛生の要点は次のとおりです。
手洗い
頻繁に、正しい手洗いを実施することが衛生の基本。
手指消毒器
手洗いの代わりにはならない。手洗いの補助として使用。
清掃着
専用の清掃着を備える。シェルターで着た服や靴を自宅で使わない。
フットバス 過信は禁物。適切な消毒液の選択と頻繁な交換が必要。
病原体による環境汚染が疑われる際には、その病原体に有効な消毒剤を用い、菌のふきとり培養により効果を検証します。
シェルターの衛生管理の定石は、研修と訓練です。その意義がわからない人にとっては、衛生手順は面倒で時間を浪費するように見えてしまいます。マニュアルを作成して周知することはもちろん、全てのスタッフに衛生の重要性と効果について理解してもらい、実際の手順を訓練することが非常に重要です。
※スポットクリーニング 普段は猫をケージ内に滞在させた状態で最低限の清掃を行い、猫が変わるときまたはケージの汚れがひどいときに本格的に清掃消毒する方法。 猫の移動を最小限に抑え、匂いが残るため、猫のストレスが軽減される。