アニマルシェルターの衛生管理2 洗浄消毒剤

洗浄消毒は、化学的手段(石鹸、洗剤、または消毒剤)または物理的手段(蒸気、紫外線(UV)、放射、乾燥を含む熱)によって達成できますが、アニマルシェルターでは、ほとんどの場合、洗浄消毒は化学物質によって行われます。状況によっては、紫外線と乾燥が補助的に用いられることがあります。

洗浄消毒剤には、洗浄用の石鹸または洗剤、有害微生物を殺すための消毒薬、および定期的に使用する、 乾燥した油膜に浸透する脱脂剤が含まれます。洗浄と消毒に使用する薬剤は、シェルターの構造特性や問題となる微生物などによって決められます。

  洗浄および消毒剤は常に適切な濃度で使用する必要があります。 同じ製品を洗浄と消毒の両方に使用している場合は、各機能について使用法についてメーカー表示に従うことが重要です。 特定の病原体に対する消毒剤の有効性の表示は、特定の濃度と接触時間における試験で決定されます。 これらの濃度と接触時間が実際に守られていない場合、製品の有効性は不明です。 適切な濃度が得られるようにするには、測定機器を使用した正確な測定が必要です。 計量カップやその他の器具を用意し、製品とその適切な希釈方法を薬剤の保管場所に掲示します。 いくつかの製品は異なる濃度で使用できるように表示されていますが、一般に、濃度が高くても必ずしもより多くの微生物を殺すわけではなく、実際に動物や人間に害をおよぼす可能性があります

メーカーによる特別な指示がない限り、製品を混合しないでください。例えば、逆性石鹸は石鹸や洗剤によって不活性化され、塩素系消毒剤とアンモニアを混合すると有毒蒸気が発生する可能性があります。洗浄製品は、効果を維持するために、食品から離して適切な熱と光の条件下で保管する必要があります。洗浄消毒剤の安全な使用について、シェルター職員やボランティアに研修を行う必要があります。

  アニマルシェルターにおいては、一部の消毒剤には注意が必要です。フェノールは猫に毒性を示すため、猫を収容するシェルターではフェノール系消毒剤の使用を避ける必要があります。 アルデヒド系は粘膜への刺激性が強く、使用する人への健康危害が懸念されるため、避けたほうが無難です。 外科手術の際の消毒によく用いられるクロルヘキシジンなどのビグアニドは真菌に対する効果は強力ですが、魚に毒性があるため、環境への懸念から日常の消毒には推奨しません。 

日本のシェルターで一般的に用いられている消毒剤は、逆性石鹸(第四級アンモニウム化合物)と次亜塩素酸ナトリウムです。逆性石鹸は刺激が少なく手指の消毒にも使用できますが、パルボウイルスや皮膚真菌など、シェルターで問題になる微生物への効果は限定的です。次亜塩素酸ナトリウムは安価で、シェルターで問題になる微生物のほとんどに効果がありますが、気管への刺激が強く金属腐食性があります。そのため、場面による使い分けが必要です。