アニマルシェルターにおける動物のケア5 シェルターにおける群管理計画

動物の流れ <fast track(高速路)/slow track(低速路)>

アニマルシェルターの収容能力や感染症予防などの観点から、シェルターで受け入れた動物は一刻も早く譲渡することが理想です。しかし動物の状態によっては(幼齢、負傷など)一定の滞在期間が必要な場合もあります。これらの動物を2群に分けて管理するのがfast track/slow trackの考え方です。比較的譲渡されやすい子犬や子猫、友好的な小型~中型犬などは、健康や行動上の問題がなければfast trackに割り当てられます。そこでは感染症予防に留意した、迅速な譲渡に主眼が置かれます。幼齢、負傷、または行動上の問題がある動物は長期収容を前提としたslow trackに割り当てられます。そこでは動物福祉とエンリッチメント※が重視されます。fast trackに割り当てられた動物であっても、健康上の問題が生じたり、譲渡が遅れるとslow trackに移動されます。

 

公開収容

公示期間中にfast track動物を譲渡希望者(または団体)に公開し、譲渡の予約をしてもらうことにより、さらに滞在期間を短縮することができます。もちろん彼らには、公示期間中に元の飼い主が現れる可能性があることを伝えておく必要があります。譲渡に関しては、明確なルールを定めておく必要があります(団体よりも個人を優先するか否か、先着順か否かなど)。また公開中においても動物の状態を随時チェックし、「譲渡不適」とみなされる状態になったときは、速やかに未公開エリアに移動させる必要があります。予約された動物は検査を受け、公示期間満了後に避妊去勢手術を実施します。新しい飼い主は、その翌日に動物を連れ帰ることができます。

 

収容および結果の計画

動物の流れを計画する上で、収容と可能性があるそれぞれの結果の予測が不可欠です。いずれの場合も、各経路で肯定的な結果が得られる可能性を含め、ケアの能力の限界を明確に理解することは、シェルターでの収容方針と管理決定の形成に役立ちます。 

一般的な収容方針の一部を以下に示します。ほとんどのシェルターは、このうちのいくつかを組み合わせます(例えば私が勤務する自治体では、犬は無制限に収容するが、猫は自活不能の個体のみ収容、その他の動物は収容しない)。

※エンリッチメント 正式には「環境エンリッチメント(environmental enrichment)」。動物福祉の立場から、飼育動物の「幸福な暮らし」を実現するための具体的な方策のこと。詳しくは改めてお話しします。ちなみにenrichmentを自動翻訳すると「強化」や「栄養強化」と訳されるので注意が必要。