アニマルシェルターにおける動物のケア6 収容能力の計算

アニマルシェルターに求められる収容能力は、次の4つの要素から算出されます。しかし実際には動物の種類や状態、受け入れ理由、収容施設の構造などによって微調整が必要ですので、あくまでも概念的なものと捉えてください。

 

必要とされる収容数(Required Holding Capacity:RHC)

譲渡対象ではない動物、例えば公示期間中、狂犬病検診中、または譲渡を見込んでいるが準備ができていない動物などの収容数です。それぞれ法令や内規で必要な保持期間が定められているはずです。RHCは月間1日平均収容数に、必要な保有期間を掛けることで計算できます。例えば1日に5頭の動物を受け入れ、平均滞在期間が7日間のシェルターには、35頭分の収容スペースが必要です。

 

譲渡対象動物の収容数(Adoption-driven Capacity:ADC)

ADCは、譲渡に向かっている動物の飼養数です。目標平均滞在期間に、月間1日平均譲渡数を掛けることで計算できます。目標平均滞在期間は概ね2週間程度で設定しますが、譲渡促進の観点から少なくとも2回の週末をはさむことが理想です。例えば月平均15頭(1日平均0.5頭)の動物を譲渡するシェルターには、14×0.5=7頭分の譲渡対象動物の収容エリアが必要です。

 

日常のケア提供能力(Staff Capacity for Daily Care:SCDC)

日常の動物のケアに必要な時間は、1日当たりの滞在動物数に1頭あたりのケア必要時間を掛けることで算出されます。一般的に、給餌や清掃といった基本的なケアには1日につき1頭15分の時間を確保することが推奨されているので、例えば、1日の滞在動物数が30頭のシェルターに必要なケアの時間は

30(頭)×15(分)÷60=7.8時間

です。スタッフが日々のケアにかけることができる時間をケアに必要な時間で割ることによって、必要とされるスタッフの人役を計算することができます。例えば先ほどのシェルターの場合、スタッフの1日当たり契約労働時間が7.5時間であるとすると、必要な人役は1を少し超えるため、スタッフに残業してもらうか、パートタイムのスタッフをもう一人雇い入れる必要があります。

 

スタッフのフロースルー能力(Staff Capacity for Flow-Through)

スタッフのフロースルー能力とは、収容、行動評価、避妊/去勢手術、治療、譲渡、移送、または安楽殺など、シェルター滞在中のいくつかのポイントで各動物に必要な特定のサービスを提供する能力を指します。スタッフのフロースルー能力が不十分な場合、これらのポイントのいずれかが積み残しにつながり、その結果、全体の能力に問題が生じる可能性があります。これらについては、各ポイントごとに計算する必要があります。例えば、毎日5匹の動物を受け入れ、収容時検査を完了するのに20分かかる場合(簡単な検査、マイクロチップスキャン、ワクチン接種、写真撮影、データ入力など)、スタッフの作業時間は少なくとも100分が見込まれます。また、行動評価や避妊/去勢手術など、特定のスタッフにしかできないサービスがある点についても留意する必要があります。