アニマルシェルターにおける感染症対策3 感染症の検査

感染症の検査は、病原体を直接見つけるか、病原体の存在を間接的に認識することによって行われます。

まず、検査のための検体を患者から採取します。検体は「糞便」「尿」「たん」「うみ」など、単独で採取できるものもありますが、場合によっては生検(生きたまま組織の一部を取り出す)や剖検(死後の動物から組織を取り出す)も行われます。最初に、検体が検査に耐えうるものか否かを判定した上で、検体の色やにおいなどを肉眼的に観察します。

 

直接検鏡 

まず顕微鏡で検体を観察し、病原体を探します。原虫や寄生虫の卵、真菌の胞子など、比較的大きなものはそのまま数百倍の倍率で観察することができますが、細菌は非常に小さく見えにくいため、染色した上で1000倍以上の倍率で観察します。病原体そのものだけではなく、同時に出現する細胞や結晶などもチェックします。

 

培養検査 

検体を寒天培地に塗り、適切な温度で培養すると、細菌が増殖し「コロニー」を形成します。最初は「血液寒天培地」や「チョコレート寒天培地」などの基本的な培地で培養します。コロニーの色や形などから細菌の種類が推定できれば、特定の細菌だけが生える「選択培地」を用いた同定検査を行います。患者が抗生剤を服用していると検査結果に影響するので、注意が必要です。

 

ウイルスは基本的に培養できないので、酵素免疫測定法で抗原や抗体を検知するか、PCRでウイルスの遺伝子を検出します。

 

酵素免疫測定法 (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:ELISA)  

ELISAは、検体中の抗体または抗原の存在を検出するために使用される生化学的手法です。ELISAは専用の機器が必要で、検査は専門機関に依頼する必要がありますが、この原理を用いたイムノクロマト法による簡易検査キットが市販されています。これを用いると、専用の機器がなくても約10分で検査が可能で、特に猫白血病ウイルス(FeLV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)、犬糸状虫、および犬パルボウイルスの検査キットは、シェルターに常備することが望まれます(とはいえ、高価で使用期限が短いのですが)。

 

ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction: PCR) 

PCRとは、病原体のDNAまたはRNAを増幅することで、遺伝子を直接検出しやすくする手法です。PCRの特徴は、極めて少量の病原体を検出できる非常に感度の高い検査であることです。この特徴により、感染後すぐに、多くの場合、発症前でも検出が可能ですが、反面、偽陽性の結果が出やすいという欠点にもつながります。PCRは必ずしも生きた病原体を検出するわけではなく、病原体の遺伝子を検出するので、陽性結果が必ずしも現時点での感染を示すわけではないことを意味します。また、不活化ワクチンに反応する可能性もあります。PCRも専用の機器が必要で、検査の際には専門機関に依頼する必要があります。