譲渡に関する規制 その2 譲渡する動物

「第二種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」(平成25年4月25日環境省告示第47号)には、譲渡する動物についても定められています。

 

譲渡業者にあっては、可能な限り、離乳等を終えて、成体が食べる餌と同様の餌を自力で食べることができるようになった動物(哺乳類に属する動物に限る。)を譲渡しに供するよう努めること。(第5条6のイ)

 

哺乳類の子は母乳を飲んで育ち、離乳期間を経て大人と同じ食事がとれるようになります。授乳や離乳は母親に任せることが望ましく、母親がいない場合であっても、授乳や離乳に際しては特別なケアが必要であることから、一般的に授乳期や離乳期の動物は譲渡には向かないとされています。しかし授乳や離乳に関するスキルを持っている人であれば問題ないということで「努める」とされていると考えられます。

一方、「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号)にはこう規定されています。

 

犬の所有者は、子犬の譲渡に当たっては、特別の場合を除き、離乳前に譲渡しないように努めるとともに、法第22条の5の規定の趣旨を考慮し、適切な時期に譲渡するよう努めること。また、譲渡を受ける者に対し、社会化に関する情報を提供するよう努めること。(第4の8)

 

猫にも同様の規定が設けられています。「基準」の「解説」によると、「特別の場合」とは「母親の分娩事故等による死亡、子育ての放棄等」が想定されていて、離乳前に加え、社会化期終了以前の譲渡を行わないことが所有者等の責務と規定されています。シェルターにおける子犬や子猫の譲渡の多くは「特別の場合」を前提としているため、社会化の規定は盛り込まれていないと思慮されますが、この規定の趣旨を考慮し、シェルター譲渡においても社会化に関する情報を提供することが望ましいと考えられます。

 

譲渡業者及び届出をして貸出業を行う者にあっては、可能な限り、飼養環境の変化及び輸送に対して十分な耐性が備わった動物を譲渡し又は貸出しに供するよう努めること。(第5条6のロ)

 

一般的に健康な離乳後の犬猫であれば、飼い主や住む家が変わる程度の飼養環境の変化や、自家用車で1時間程度の輸送には耐えうると考えられますが、譲渡には様々なパターンがあるため、一概には言えません。現在日本では、譲渡動物の空輸が一般的に行われています。極端な話、沖縄から北海道に空輸されるようなこともあるでしょうし、場合によっては海外に譲渡されることもあるでしょう。気候や住居文化の変化、そして長距離輸送に耐えられるかについては、健康状態や気質などに基づき個体ごとに判断する必要があります。もちろん大前提として、輸送時間を最低限に抑える努力は必要です。動物の輸送については、このような規定もあります。

 

動物の疲労又は苦痛を軽減するために、輸送時間はできる限り短くするとともに、輸送中は、必要に応じて休息又は運動のための時間を確保すること。(第5条四のホ)