ケタミン+キシラジン

ケタミンとキシラジンの組み合わせは、麻酔銃や吹き矢を用いて動物を捕獲する際に、不動化薬として用いられます。この組み合わせは、AVNAガイドラインにおいて安楽殺手段として推奨されている「非バルビツレート系注射麻酔薬」の例として挙げられています。

 

Nonbarbiturate anesthetic overdose—Injectable anesthetic overdose (eg, combination of ketamine and xylazine given IV, IP, or IM or propofol given IV) is acceptable for euthanasia when animal size, restraint requirements, or other circumstances indicate these drugs are the best option for euthanasia. Assurance of death is paramount and may require a second step, such as a barbiturate, or additional doses of the anesthetic. For additional information see Section M2, Noninhaled Agents, and Section S2, Laboratory Animals.

 

非バルビツール酸系麻酔薬の過剰投与-注射可能な麻酔薬の過剰投与(例:ケタミンとキシラジンの組み合わせの静脈内、腹腔内、または筋肉内投与、またはプロポフォールの静脈内投与)は、動物のサイズ、拘束条件、またはその他の状況がこれらの薬物が安楽殺の最良の選択肢であることを示している場合、安楽殺手段として許容される。死亡の保証は最優先事項であり、バルビツール酸などの2番目のステップ、または麻酔薬の追加投与が必要になる場合がある。

 

ケタミンは「解離性麻酔薬」、キシラジンは「α2受容体作動薬」と呼ばれる薬物で、組み合わせることにより、強力な麻酔薬として使用されます。効果の発現が早く、筋肉内注射も可能という利点がある一方、高価でしかも安楽殺を引き起こす用量が確立されていないという欠点があります(腹腔内麻酔に用いる量のおおむね5倍で運用されていますが、高価なのでギリギリの量で済ませたいということはあります)。また安楽殺薬としてFDA(米国食品医薬品局)の承認を得ていないため、推奨される方法の例として挙げておきながら「承認された安楽死薬が利用できない状況」で容認されるという、よくわからない表記になっています(安楽殺前の鎮静目的での使用はOKです)。

ケタミンは麻薬として米国や日本で規制されています。日本で保管・使用するためには、都道府県知事による麻薬取扱者の免許※が必要です。ケタミンは獣医療において重要な薬剤ですから、多くの動物病院が免許を取得していますし、動物を捕獲するための不動化薬としても用いられるため、免許を取得している保健所や動物愛護管理センターも多いと思われます(面倒くさいからケタミンを使うのをやめたという声も聞きますが)。

 

※動物を捕獲するために麻酔銃や吹き矢で使用する場合、獣医師が診療や治療目的で用いるには「麻薬施用者免許」、行政機関が捕獲そのものを目的としているのであれば、それは「学術研究」にあたり、「麻薬研究者免許」(獣医師でなくてもOK)が必要。