プロポフォールはマイケル・ジャクソンの死因になった薬物としてご存じの方も多いかもしれません。プロポフォールも、AVNAガイドラインで安楽殺手段として推奨されている「非バルビツレート系注射麻酔薬」の例として挙げられています。
プロポフォールはバルビツレートと同様、中枢神経系のGABAA受容体に作用しますが、バルビツレートとは異なる構造をもつ新しい注射麻酔薬です。作用の発現が迅速かつスムーズで、覚醒も速く、使いやすい注射麻酔薬です。一方、静脈注射時の強い血管痛や、投与中の灼熱感、また術中覚醒が起こりやすいなどの欠点があります。しかしその欠点を上回る長所があり、広く使われています。
EUの死刑廃止のあおりを受けて、米国でチオペンタールNaが入手困難になった際に、代替品としてプロポフォールが検討されましたが、死刑に用いられる薬物であるとのレッテルを貼られ、欧州からの供給を止められてしまうと医療崩壊を招くため、断念したそうです。それくらい普及している注射麻酔薬なのです。
プロポフォールの急速投与または過剰投与により、意識が消失した後に心肺機能の抑制が起こり死に至ります。プロポフォールは優れた麻酔薬のため、安楽殺に使うにはコツが必要かもしれません。
プロポフォールは英国の製薬会社アストラゼネカから「ディプリバン」の商品名で発売されています(日本ではアスペンジャパンが販売)が、日医工や丸石製薬、マイラン製薬から後発品も販売されています。動物用医薬品としては「動物用プロポフォール注1%「マイラン」」(マイラン製薬)「プロポフロ」(ゾエティス・ジャパン)が犬猫用として販売されています。
現時点において、環境省が公式に推奨している方法ではありませんが、AVMAのガイドラインにて推奨されています。某国立大学では以前からプロポフォールを犬の安楽殺に使用していますし、行政による犬猫の殺処分にも一部使われています。静脈内注射でしか使えないというのはネックですが、動物用医薬品も販売されており、安楽殺を起こすための用量などの知見が集まれば安楽殺法として広く普及していくかもしれません。