ペントバルビタールNa(動物用医薬品)の復活を!

日本において「ソムノペンチル」(ペントバルビタールNa)の販売が諸事情により終了してからずいぶん経ったような気がしますが、代替手段について未だ環境省からの公式見解は示されておりません。販売終了間際に駆け込み購入したソムノペンチルも、すでに使用期限が切れていることでしょう。現場においては、それが本当に安楽殺であるか否か疑いつつ、恐る恐る代替の薬剤を使っていることでしょう。

それくらい、ソムノペンチルはいい薬剤でした。安価で、しかも液体のため扱いやすく、何といっても、本当に「眠るように」安らかに死んでいきます。人間の都合で殺すのですから、せめて最期は苦しまずに死んでほしいですから。

実際に使ってみると、欧米のシェルターにおける犬猫の安楽殺手段がペントバルビタールNa一択である理由がよくわかります。しかしそれが現在日本では使えません。おかしな話です。とぼやいていても仕方がないので、代替手段として日本でも入手できるバルビツレートの「ラボナール」(チオペンタールNa)を使ってみましたが、何だか釈然としないものが残りました。/バルビツレートを用いた安楽殺の場合、投与量は麻酔量の2~4倍が相場だといわれています。例えばペントバルビタールNaの場合、犬猫の麻酔量は25mg/kgですから、一般的に安楽殺の投与量は犬で50mg/kg(麻酔量の2倍)、猫で100mg/kg(麻酔量の4倍)(いずれも心腔内投与の場合。腹腔内投与の場合はさらにその倍量)くらいではないでしょうか。猫の方が効きにくいので、猫の投与量はどうしても多めになります。

ラボナールは人用薬ですから、当然犬猫の麻酔量など示されていません。文献によると、犬で10~25mg/kg、猫で5~10mg/kgといわれています。犬の最大麻酔量の2倍は50mg/kgで、この量は猫の最大麻酔量の4倍強ですから、この量を犬猫の安楽殺量として差し支えないかと思います(心腔内投与の場合)。ラボナールは300mgまたは500mgのアンプル入りで、その都度注射用水で溶かして使います。子犬や子猫に使うと余ってしまいますが、溶解後の薬剤の保存性は不明なのでそのまま捨てるしかありません。逆に10kgを超えるような犬には1管では足りないので、何管も使います。

濃い目に溶いて、心臓に一気に注入するのですが、私個人的には、ソムノペンチルよりも効果の「キレが悪い」印象があります。量を増やせばよいという単純な話でもないので(コスト面だけではなく、大量投与による予想外の反応の可能性もある)、そこは疑問点として残りました。

私としては、米国から輸入するか、国内生産によって、動物用医薬品としてのペントバルビタールNaが国内で入手できるようにしてほしい、それだけです。おそらく儲からないので、国内の製薬会社は製造を渋るでしょうが、そこは国費を投入してもよいと私は思います。国際的な駆け引きの代償を、全く関係ない動物たちが受けるようなことがあってはなりません。