再び「譲渡適性」について考える

環境省の統計資料である「動物愛護管理行政事務提要」における、殺処分数の分類はこの通りです。

この中で純粋に「殺処分」といえるのは分類②のみで、私は分類②を法的に禁止した上で、分類①を「安楽殺」、分類③を「死亡」と再定義すべきと主張しています。しかしそれだけでは不十分で、①と②のいずれに振り分けるかの判断は非常にあいまいです。つまり、本当は②のはずなのに、①に分類されるようなことが起こりがちです。もっとはっきり言うと、治療して回復すれば譲渡に適する可能性があるような動物を、早々に見切っているのではないかということです。そこは各自治体の力量に委ねられています。ミルクボランティア制度を作ったり、地元獣医師会と連携して負傷動物の治療を動物病院で行っているような自治体もあれば、そういうことは一切せず、しかも動物愛護管理センターに最低限の人員しか配置せず、早々に見切らねばならない状況を作っているような自治体も実在します。地方分権の名のもとに地域の裁量に任せるというのは、やる気のある自治体にとっては自主事業を展開するチャンスですが、やる気のない自治体が怠けることも黙認するということでもあります。運用上の細かい規定については地方に任せるにしても、大枠は国が示すべきと私は思います(国からの指示があってはじめて、思い腰を上げる自治体もありますからね)。

たとえばこんな話があります。ある自治体の担当者が「離乳前の子猫の殺処分は分類①でよいか」と環境省に尋ねたところ、担当者は「ミルクボランティアで対応している自治体もあるのだから、譲渡は可能。つまり分類②」と回答しました。それはそうなのでしょうけど、それならミルクボランティアを推進するよう各自治体に働き掛けないとダメでしょう。普通に考えて、ミルクボランティア制度を望まない行政担当者などいません。管理部門や上層部のレベルで「待った」がかかっているのです。そのリミッターを解除するのが国の通知なのです。「国がやれというから」というのは、いい殺し文句なのです。

例えばこのような動物について、譲渡適性をどう判断しますか?

 

生後数日の子猫/目脂やくしゃみの症状がある子猫/大腿骨単純骨折の子猫/下半身不随だが元気な成猫/事故で3本足になった子犬/事故で片目を失ったが傷は癒えている成猫/パルボウイルス簡易検査陽性だが、無症状の子犬/FeLVまたはFIVの簡易検査陽性だが、無症状の成猫/全身性の疥癬や毛包虫症の子犬や子猫/全身が腫瘍だらけだが、問題なく生活している犬/飼い主を含め、複数の人を咬んだ犬/全く人慣れしていない野犬/土佐闘犬…

 

ほんの一例ですが、これらはすべて「譲渡不適」と判断される可能性があります。それぞれのモデルケースについて「譲渡適性」について考えていきたいと思います。