ケース2 「猫かぜ」の子猫

動物愛護管理センターでは、離乳後の「猫かぜ」の子猫の受け入れも珍しくありません。「猫かぜ」は人間のかぜと同様、いくつかのウイルスや細菌による呼吸器感染症の総称で、獣医学的には「猫の上部気道感染症(URI)」といいます。多くの猫が原因微生物を保有していて、ストレスにより発症するといわれています。シェルターメディスンの権威であるT先生いわく、軽い猫かぜは譲渡してストレスがかからない状態に置けば治るということですので、無色の目脂や鼻水程度なら、そのまま譲渡してしまうところも多いと思います(譲渡時の説明は必要ですが)。もちろん、ボランティアに預けることも可能です。ストレス軽減の観点から、ボランティアに預ける方がいいかもしれません。

目脂で眼が完全にふさがっていたり、鼻づまりしているような子猫はさすがにそのままでは譲渡できないので、抗生剤や目薬を用いて治療を行います(具体的な方法は、例えば環境省「被災ペット救護施設運営の手引き」53ページ)。最近は抗ウイルス薬も市販されています。その際に注意しなければならないことは、目脂の除去や点眼などの処置そのものがストレスの原因になることです。病気で弱っているところにさらにストレスをかけ、とどめを刺してしまってはシャレになりません。

かつて、猫かぜに罹患した猫は隔離する必要があるとされてきましたが、ほとんどの猫が病原体を保有していることが明らかになってきたので、現在では隔離の必要はないとされています。それよりもストレス対策が必要です。

軽度~中程度であれば1週間程度の処置で回復しますが、なかなか回復しない猫もいます。1週間以上の治療で回復しない場合、そこで見切るのではなく、動物病院で精密検査を行うのが理想です。また、重症化しているわけでもないのに、ダラダラと症状が続く場合は、猫エイズなどの基礎疾患が疑われる場合もあります。FIVの簡易検査で陽性反応が出た場合、「回復の見込みなし」として安楽殺することはやむを得ないと思います。

野良猫の場合、症状がかなり悪化してから発見されることも多く、受け入れ時にすでにぐったりしていたり、結膜炎を起こしていることも珍しくありません。補液などの支持療法が必要になりますし、他の疾患の可能性もありますから、速やかに動物病院における処置が必要です(回復率は高くありません)。

 

【結論】軽症~中程度であれば薬物治療が可能。軽症の場合はそのまま譲渡も可能。治療に反応しない場合や重症の場合は動物病院における治療が望ましい。その場合、地元獣医師会との協力体制を構築すること。それにより殺処分数が大幅減の可能性あり。