シェルターにおけるFeLVの扱い

米国のシェルターメディスンの現場ではどう考えられているか、HurleyとPesavento(2013)の記述を見てみましょう。

 

For instance, false or transient positive tests for FeLV will occur, due to the low prevalence in healthy cats and the fact that some cats will naturally recover. Various confirmatory tests are available, involving additional cost and the logistical difficulties of holding the animal while awaiting results. The risk of euthanizing the cat is that he or she may be perfectly healthy. However, a cat testing positive even on a test with relatively poor predictive value is still much more likely to be ill than one testing negative. Sadly, many shelters admit a larger number of healthy, FeLV negative cats than are adopted out. If some cats are going to be selected for euthanasia and the choice is between FeLV positive and FeLV negative cats who are otherwise of similar adoptability, it makes sense to choose the FeLV positive cats, leaving more resources available for the rest of the population.

“Shelter Medicine for Veterinarians and Staff, Second Edition” 338p

たとえば、健康な猫の有病率が低く、一部の猫は自然に回復するという事実のために、FeLVの偽または一時的な陽性結果が発生する。様々な確定検査が利用可能であるが、そこには追加費用と結果を待つ間動物を保持することの物流上の困難がつきまとう。猫を安楽殺するリスクは、猫が完全に健康である可能性があることである。しかし、陽性予測値が比較的低い検査であっても、陽性の猫は、陰性の猫よりも発症する可能性がはるかに高い。残念ながら、多くのシェルターでは、譲渡数よりも多くの健康なFeLV陰性猫を受け入れている。一部の猫が安楽殺対象として選択され、他の点では同様の適性を持つFeLV陽性猫とFeLV陰性猫のどちらかを選択する場合は、FeLV陽性猫を選択するのが理にかなっており、残りの集団がより多くの資源を利用できる。

 

米国のシェルターのひっ迫した状況が文面からにじみ出ていて、私も胸が痛む文書です。設備と人手が足りない日本の多くの行政機関もおそらく同様の考え方なのでしょう。気持ちはわかりますが、FeLV陽性を安楽殺の根拠にするのであれば、PCR等の確定検査を行わなければ、第三者の理解は得られないと私は思います。もっと言えば、安楽殺を検討すべきなのは「FeLV持続感染の猫」なのであって、それ以外は単独飼育・完全屋内飼育を前提に譲渡は可能であると考えます。

とはいえ、FeLV陽性猫を隔離して12週間置く余裕があるシェルターはまずないでしょうから、現時点で明らかに持続感染を疑う症状を示していなければ、隔離が必要であることを説明した上で譲渡し、その後再検査を行うという手もあります。その際には再検査の結果、持続感染であることが判明した場合の対応についてもあらかじめ定めておく必要があります。