ネグレクトの犬のリハビリについて

多頭飼育崩壊からレスキューされたような犬は常におびえ、特定の刺激に対して異常に反応したりします。これは恐怖症の一種とされ、社会化の失敗が原因といわれています。

 

社会化期(生後3~12週)の際,身体的ならびに社会的環境が退屈な状況にあると,将来なんでも怖がる性格になる可能性がある.子犬の時代に疼痛を感じるような状況があると,同様に将来恐怖心の強い犬になることが考えられる.

(「犬と猫の行動学-問題行動の理論と実際-」ヒトと動物の関係学会編、1996年、79頁)

 

このような状態の犬は、通常の家庭犬としての適性はありませんから、安楽殺を選択しないのであれば、リハビリを施し譲渡するか、サンクチュアリで終生飼育することが一般的です。もちろん極度の攻撃性がなければ、理解のある方に譲渡することは可能です。ほとんどの行政機関はリハビリのスキルを持っていませんし、長期にわたるリハビリのために割くことができるスペースもありません。現実的には、リハビリのスキルを持った動物愛護団体に譲渡して再譲渡することになるのかなと思います。

具体的にどうリハビリを行うかというと、「系統的脱感作法」や「暴露法」といった行動療法を用います。犬の恐怖症の場合、適切なリハビリを行えば予後は良好であるといわれています。

 

たとえば理由もなく相手に不安や恐怖を感じる場合、そこにはレスポンデント条件づけが働いていると考えられる。このような場合は、その不安や恐怖を制止する反応、たとえばリラクセーション反応を学習させることによって、不安や恐怖などの不適切な反応を抑制させればよい。これを逆制止という。この逆制止の原理を応用して、ウォルピ(Wolpe.J.,1958)の開発したのが系統的脱感作法である。これは、不安や恐怖を引き起こす条件刺激に対する過剰な感受性を系統的に弱めていき、最終的に条件刺激に対する反応が起こらないようにする方法である。

最近は、早期に不安を低減することが可能であることから、系統的脱感作法に代わって、エキスポージャー(暴露法)が用いられるケースも増えている。これは、不安や恐怖を引き起こす刺激に患者をさらすことによって、刺激に対する不適応的な反応を消去する治療技法である。実際の刺激を用いる方法と、イメージなどを用いる方法があるが、いずれも不安や恐怖が引き起こされなくなるまで、刺激を与え続けることが必要となる。

(「心理学検定基本キーワード」日本心理学諸学会連合心理学検定局編、2009年、137頁)

 

行動療法に即効性はありませんから、それなりの時間がかかります。多頭飼育崩壊は全国で問題になっていて、リハビリが必要な動物も多数発生していると思われます。適切なリハビリが実行され、1頭でも多く温かい家庭に譲渡されることを願っています。

 

※英語の文献によく出てくるrehabilitationは主に精神的な回復を目指すもので、身体的回復を目指すのはphysical therapyまたはphysical rehabilitationといいます。