犬猫の収容数、ひいては殺処分数を減少させるためには避妊去勢手術の普及が重要であるということについては、おそらく異を唱える人はいないでしょう。動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第7条第5項にも「動物の所有者は、その所有する動物がみだりに繁殖して適正に飼養することが困難とならないよう、繁殖に関する適切な措置を講ずるよう努めなければならない」と定められています。
とはいえ、避妊去勢手術に消極的な飼い主が多いことも事実です。その理由をまとめると、概ね下のとおりです。
・手術で体にメスを入れるのがかわいそう。麻酔事故も心配。
・人間にしないような手術を動物に施すのはおかしい。
・生まれてきたからには、一度くらい子どもを産ませてやりたい。
・完全室内飼育だから必要ない。
・手術するにはまだ若いと思っていたら、いつの間にか妊娠していた。
・お金がかかる。
・太る。
・社会規範に従うのはカッコ悪い(特に反社会的シンボルとして特定犬種を飼う人)。
・そもそもどうすればいいかわからない。
特に、避妊去勢手術のタイミングを逃してしまい、結果的に妊娠してしまったというケースが多いのです。伝統的に避妊去勢手術の適齢期は6か月齢以降とされていますが、早い個体であれば、3.5か月齢にはすでに発情が始まっています。そこで米国においては、6か月齢より前の子犬や子猫への「早期不妊」手術が、1970年代から行われています。そのため米国では、早期に避妊去勢手術を行うことの問題点について議論されています。例えば
・子犬や子猫は麻酔のリスクが高い
・発育不全や他の骨格異常の可能性がある
・肥満になりやすい
・性格が変わる(活発さがなくなる)
・外部生殖器が発達しない
・尿失禁しやすい
などについて議論が行われています。一部事実もありますが、早期に手術を行うメリットの方が大きいと判断され、現在では6~12週齢で避妊去勢手術を行うのが一般的になっています。ちなみに日本の教科書にはこう書かれています。
特に猫については、日米に差があるようです。日本においても「早期不妊」手術を推進しようとしている人たちもいますが、まだ一般的ではないようです。